このページでは二十四節気「白露」の七十二候・次候における「鶺鴒鳴」「玄鳥帰」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。
鶺鴒鳴の読み方
鶺鴒鳴は「せきれいなく」と読みます。
鶺鴒鳴とは?
鶺鴒鳴とは、二十四節気の「白露(はくろ)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の第2節です。
72の節気を持つ七十二候においては「第四十四侯(第44番目)」の節気、「次候(じこう)」にあてられた語句になります。
太陽の黄経は170度を過ぎた地点です。
白露期間中のその他の七十二候の種類・一覧
初侯:草露白
次侯:鶺鴒鳴
末侯:玄鳥去
鶺鴒鳴の意味・由来
日本(略本暦)での解釈
「鶺鴒鳴」の意味は、「鶺鴒」「鳴」とに分解すると分かりやすくなります。
「鶺鴒」の意味
鶺鴒とは、鳥類のセキレイのことです。
これに鳴くを付して「鶺鴒が鳴く頃」という意味になりんす。
鶺鴒(セキレイ)とは?
セキレイは全長約20㎝ほどのスモールな鳥です。日本以外にも生息している鳥ですが、日本で観られるのは次の3種類です。
- セグロセキレイ
- ハクセキレイ
- キセキレイ
この中で本州で見かけることが多いのが「セグロセキレイ」ではないでしょうか。セグロセキレイは河川付近の水辺、沼地などを主として、市街地や畑などでも見かけることができます。
日本だけに生息しているセキレイとされてきましたが、近年ではアジア諸国はじめ、ロシアでも目撃情報があるようです。
セキレイは全般的に背中(羽)が黒く、腹が出ているの‥ではなく!お腹が白い!!‥ので!地上から飛ぶ姿を見ると白い小鳥が飛行しているように見えます。
セキレイの別名
セキレイには古来、次のような別名があります。
石たたき・庭たたき
セキレイは身体ほど長い尾を上下に振る仕草が石や地面を叩いているように見えることから、「庭たたき」俳句などでは「石叩き(たたき)」と表現されることがありんす。
恋教鳥・教え鳥
セキレイは日本書紀や古事記にも登場する鳥であり、日本大陸を創造したイザナギ神とイザナミ神に夫婦和合の作法を教えたとされています。このため、別名で「恋教鳥(こいおしえどり)」もしくは「教え鳥」とも言われることもあります。
またこれらの故事に由来して婚礼の儀で用いられる「鶺鴒台」の語源にもなったとも云われ、セキレイを殺すと自らの子孫に不幸がおよぶという俗信まであるようです。
セキレイの繁殖期
鶺鴒は、白露(7月〜9月頃)の時期になると小川や沼地で「チチん、チチん」と甲高い鳴き声をしきり上げ、相手を誘う行動が際立ち、繁殖期を迎えます。
中国(宣明暦)での解釈
中国における白露の初候・第四十三侯の七十二候は「玄鳥帰」であり、読み方は「げんちょうかえる」になります。
これは略本暦(日本)七十二候の「玄鳥去(つばめさる)」と同義になりんす。
玄鳥帰の意味
「玄鳥」とは、「ツバメ」の別名です。
これに「帰」を付すことで「ツバメが南へ帰って行く頃」としています。
ツバメのその他の別名
乙鳥(つばめ)、つばくろ、つはひ、つばくら、つばくらめ、。他に地方によって呼び名が異なることもありんす。
一例
- 東北:すんばぐら、つんばくら
- 千葉県:すばくろ
- 茨城県:つばきら
- 富山県:つんばくろ
- 関西:ひいご、ひいごさん、ひゅーご
- 広島県・山口県・福岡県:つばころ、つばさ
- 徳島県:つばくろう、つば
- 熊本県:つばんじよ
- 鹿児島:まんたらげし
- 沖縄県:らまつたら
- 南西諸島の奄美群島:またがらし、がらしまた、またがらす
別名が多い=それだけ認知度が高いということを意味します。これはツバメが農家にとっては、ほんとうにありがたい鳥だったので、ツバメを保護するうちにツバメの方も人家に営巣しはじめ、スズメやハトポッポと並び人にもっとも身近な鳥の一種として広く認知されるようになったのでしょう。
スズメやハトポッポは年中日本にいますが、ツバメが日本にいるのは、わずか半年足らず。そんな背景がありながらここまで認知されている鳥というのも珍しいものです。
ちなみにこれは余談ですが、ヤクルトスワローズのマスコットキャラである「つば九郎」は、野球のチーム人数である「9」にツバメを掛け合わせて「つば九郎」としたとか。
ツバメの生態
ツバメは4月初旬頃、二十四節気で例えるなら清明(せいめい)の頃に日本へ飛来し、その後、営巣して7月頃までに産卵し、子育てをします。
営巣する時は土(泥)、枯れ草などを自らの唾液で固めて固形にしていきます。
ツバメは子育ての間、ヒナに与えるエサとして畑や田んぼの作物を食い荒らす害虫を捕獲してくることから、農家にとっては古来、益鳥として大切にされてきた歴史がありんす。
またツバメの方もカラスやトンビなどの天敵の襲撃を受けないように、もしくは、農家の人たちの思いが伝わったのか、やがて人家の軒下に営巣するようになります。
このようにして人とツバメは助長し合い、共存してきた歴史がありんす。
現今、ツバメの巣を自然環境で見かける機会が稀というほど人家の軒下で営巣する姿が当たり前になっています。
冬到来前の初秋に南国へ飛び去る
ツバメは年中、暖かい場所を求めて移動する渡り鳥なので日本大陸が寒気に包まれる頃、暖気に包まれた南国へ飛び去っていきます。
ですから、ツバメは秋口まで営巣と子育てを終えておく必要があり、枚挙にいとまがないほどセッセセッセと物事を進行させていく必要がありんす。
玄鳥帰は玄鳥来とセット!
中国の宣明暦では、二十四節気「春分」の初候(3月20日〜24日)までの「玄鳥至(げんちょういたる)」と、この「玄鳥帰(9月12日〜17日頃)」が1セットになっています。
初春にツバメが飛来し、初秋にツバメが南国(東南アジアなど)へ飛び去って行く自然現象もしくは季節の移ろいを集録しています。
二十四節気および七十二候は中国で作暦された暦ですが、この玄鳥帰を例として、なぜか鳥の行動をモチーフとした節気が多いのが特徴です。
略本暦(日本)にも集録されている!
玄鳥がらみのネタでは、日本版の二十四節気にも中国略本暦と同様にツバメに関する節気が春と秋にありんすよ。
略本暦では二十四節気「清明」の初候(4月4日〜18日頃)「玄鳥至」で南国からツバメが飛来してくる頃とし、白露(9月4日21日頃〜)の末候「玄鳥去」でツバメが南国へ飛び去っていく頃としています。
二十四節気は中国で作暦された暦であることから、島国である日本大陸とは気候気象が異なり、日本へ伝来後、日本版の略本暦としてリメイクされています。
略本暦での玄鳥がらみの節気は中国よりも約、半月ほど遅れて配置されています。
ツバメに由来したジンクス
ツバメは白露の頃になると暖気に包まれた南国へと飛び去っていきますが、再び春の清明の頃(4月初旬頃)になると戻ってきます。
この時、ツバメの習性からか昨年営巣した場所へ帰ってくるのですが、ツバメの巣を壊したり、売ったりすると不幸が舞い込んだり、金運が逃げるとされ、古来、大切にする風習が踏襲されています。
他にもツバメの巣に関しては以下のようなジンクスがありんす。
- ツバメが巣作りした家は幸運が舞飛んでくる。
- ツバメが巣作りした店は隆昌する。
- ツバメが巣作りした家は家運が爆アップする。
- ツバメが巣作りした家は子宝に恵まれる。 …etc
「鶺鴒鳴」「玄鳥帰」の日にち(期間)
- 太陽暦:9月12日〜17日頃
- 旧暦:八月節(八月の節気)