このページでは二十四節気の七十二候における「梅子黄」「反舌無声」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。
目次
梅子黄の読み方
梅子黄は「うめのみきばむ」と読みます。
梅子黄とは?
梅子黄とは、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の1節です。
72の節気を持つ七十二候においては「第二十七侯(第27番目)」の節気、「末候(まっこう)」にあてられた語句になります。
太陽の黄経は85度を過ぎた地点です。
芒種期間中のその他の七十二候の種類・一覧
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次侯:腐草為蛍
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末侯:梅子黄
梅子黄の意味・由来
日本(略本暦)での解釈
「梅子黄」の意味は、「梅」「子」「黄」とで分解すると分かりやすくなります。
「梅」とは樹木の梅です。梅酒や梅干しで有名です。「子」とは「梅の実」を意味します。もしくは「梅子」を合わせても「梅の実」を意味します。
「黄」は黄色を意味し、そなわちまとめると「梅の実が熟して黄ばむ時期」という意味になりんす。…なりんす?
梅の実が熟して黄ばむ時期になれば、いよいよ田植えの頃合いであり、梅雨の到来を告げます。
なお、現行の暦はグレゴリオ暦なので、旧暦と比べて1ヶ月遅いことから、芒種を迎える頃には全国的に田植え作業はほとんど終わっています。
ただ、古来、踏襲される田植え神事はこの頃に行われている地域が多いようです。
「梅」とは?
梅とは、梅干や梅酒で使用する梅の実が成る「梅の木」で知られた一般的に有名な木の1つです。
梅の木は中国原産であり、ちょうどこの芒種の時期(6月中旬以降)に果実が黄色くなって熟し、6月中旬〜7月いっぱいにかけて収穫時期を迎えます。
これから夏を迎えるに際し、何かと体力が必要になる時期。梅の実の果肉にはクエン酸、コハク酸、酒石酸と、オレアノール酸などの成分が含まれており、人間が摂取すれば体内活動を助長するエネルギーに変換できるとされています。
中でも有名なのが「クエン酸」ではないでしょうか。クエン酸はグレープフルーツやレモンなどの柑橘系果物が果肉に有する栄養素であり、これらを摂取した場合、エネルギーの生成や疲労回復を促進させる働きがあります。
コハク酸は聞き慣れない名前ですが、筋肉細胞のエネルギー源となる酸素を活性化させる役割があります。
梅を使ったこの時期特有の食べ物・飲み物
梅酒‥
梅酒はまだ黄色く熟していない梅の実を使用しますので、5月〜6月上旬頃の青梅を使用します。この青梅を焼酎などのお酒にハチミツや氷砂糖などと一緒にドボンっ!と漬け込んで、半年〜1年ほど寝かします。
梅酒に青梅を使用する理由
梅酒に青梅を使用する理由は、酸味が強いからです。梅酒は氷砂糖などの糖分を入れるので酸味がある方が仕上がった時においしくなりんす。
もちろん熟した梅を使用しても梅酒はできますが、酸味が少ないので口当たりのよい甘味がある梅酒に仕上がります。
梅酒に使用する梅は大きくてキズがないものを選ぶ!
また、梅酒に使用する梅は大きくてキズがないものがベストです!
理由は、梅が大きいとそれだけ梅エキスが出ますので味が濃くなります。また、キズがあれば果肉の色素が出てしまい、濁りきった梅酒になります。
透明で澄んだ梅酒にしたいのであればできるだけキズがない梅を選びましょう!
梅干し‥
梅干に使用する梅は、まさにこの芒種の時期に収穫した黄色く熟した梅を使用します。赤シソに塩を加えてそれを梅の実を一緒に容器にブチ込んで重石をします。
4〜5日して重石を取れば、あとはその梅を梅雨明けと共に干すだけです。干す時はザルの上に乗せるなどして天日干しして梅干の完成です。
梅は三毒を断つ!
あまり日常的には使用されませんし、知らない方も多いと思われますが、昔から「梅は三毒を断つ」という言葉があります。
三毒とは、「水毒」「食毒」「血毒」のことを指します。
水毒とは?
水毒とは、私たちの体内の水分の汚れことです。梅は果肉にカリウムを多く包有しており、このカリウムは体内にたまった老廃物や排泄物をションベン→尿やクソ(糞)として排出する作用を促してくれます。また、カリウムは神経や筋肉の機能を活性化させますので、むくみ予防にも役立ちます。
食毒とは?
食毒とは、人体に毒などの悪影響を及ぼす食べ物のことです。梅はクエン酸も多く包有していますので、体を疲れさせる原因となる乳酸を分解してくれる作用があります。
よくレモンなどの柑橘類が疲れを癒してくれるというのは、このクエン酸の作用によるものです。梅を摂取することで身体の疲労回復に一役買ってくれそうです。
血毒とは?
血毒とはあまり聞きなれない言葉ですが、血中の悪い成分のことです。例えば脂っこいものを多量に摂取すると血液がドロドロになっていき、血管が詰まったりする梗塞(こうそく)を生み出す要因になります。
梅干しはアルカリ性の食品なので酸性化した血液を中和してくれます。
以上のような理由から、梅は三毒を断ち、持久力をつけてくれるアドレナリンとなる食材だということがお分かりいただけましたでしょうか。
これから夏本番を迎えるに際し、体調管理はしっかりとしておきたいものです。ウフ
そして、この梅子黄から派生した言葉に「梅雨(つゆ)」があります。
梅雨の意味
梅雨とは、「梅の実が熟す頃に降る長雨のこと」を意味するほか、一説には逆の発想で「この時期に降る長雨が梅の実を成熟させる」ということが由来になっているとも云われます。
梅雨時期は太陽が雲で閉ざされる代わりに太陽の熱気だけが伝わり、何かと蒸し々々とする季節です。
田植えとは、梅雨入りする前に行われるものですが、芒種とはまさに、そのタイミングを告げる時期でもござりんす。ござりんす?
他にこの芒種の時期の季語ともなる有名な言葉に、雑節の「入梅」があります。
入梅の意味
入梅とは「にゅうばい」と読み、梅の実を収穫する時期に降る長雨に入ることを意味します。すなわち、俗にいう「梅雨」のことです。
日本は世界でも類を見ないほど雨に関する言葉がある国
日本には雨に関する言葉が梅雨以外にも、たくさんあります。例えば春から述べるとこうなります。
春雨(はるさめ)、紅雨(こうう)、五月雨(さみだれ)、時雨(しぎれ)、菜種梅雨(なたねつゆ)、走り梅雨、麦雨(ばくう)、梅雨、暴れ梅雨、送り梅雨、返り梅雨、空梅雨(からつゆ)、小糠雨(こぬかあめ)、通り雨、驟雨(しゅうう)、村雨(むらさめ) ..etc
これらはごく一部ですが、一説には400語近くあるとも云われます。
梅雨は日本特有のもの?
梅雨というのは世界にもあるのでしょうか?
答えはYESです。
日本を取り巻くアジア諸国では、日本と同様に梅雨が存在します。
実は日本の周囲には気温や湿度などが水平方向に集まって空気の塊となった「気団」と呼ばれるものがありんす。
この気団がぶつかり合うと梅雨前線が発生し、これが日本列島を覆い尽くすと雲に覆われ、ぐすついた天気が続きます。
このような梅雨前線は5月〜7月初旬にかけて発生することが多く、日本のみならず海を挟んだ隣国となる台湾や中国南部、朝鮮半島にまでおよびます。
気象衛星から送られてくる天気予報図で地球を見ると横長に尾を引いているような雲、もしくは龍が暴れているような雲が見えます。これが梅雨前線です。
⬆️梅雨前線(横長上のどデカイ雲)画像引用先:https://news.yahoo.co.jp
梅雨前線の大きな特徴として進行速度が遅いことから、停滞前線とも言われます。「停滞」なので言い換えれば雲に覆われている時間が多いことになり、これがぐずついた天気を生み出している元凶になります。
中国(宣明暦)の芒種の次候・第三十二侯の七十二候は「反舌無声」!
中国における芒種の初候・第二十七侯の七十二候は「反舌無声」になりんす。読み方「はんぜつこえなし」になります。
反舌無声の意味
反舌無声は、「反舌」と「無」「声」とに分けて考えると理解が早いです。
反舌とは、百舌(モズ )という鳥のことです。これに「無」と「声」を付して、百舌が鳴かなくなる時期を意味します。
⬆️百舌(モズ) (※画像引用先:https://ja.wikipedia.org)
百舌ではなく「ウグイス」?
日本において百舌が高く鳴きを囀るのは、秋口(11月頃)になってからであり、冬の間は鳴きません。中国と日本は海を挟んだ隣国にあたりますので、それほど極端な気候の変化はなく、だとすれば暦と季節感とが合わなくなります。
そこで現在までの通説としてしては、この時期、春先に鳴き始めたウグイスが一旦、鳴き止む時期でもあることから、反舌とはウグイスのことではないかと考えられています。
ウグイスは「ホーホケキョ」の鳴き声で知られている有名な鳥ですが、ホーホケキョのさえずりは春の繁殖期特有の鳴き声です。
ウグイスの鳴く時期としては、日本においては沖縄や九州では毎年2月頃から、東北より南側の本州では3月、東北より北の地域では4月~5月にかけて鳴きます。
七十二候が作暦された中国平原(中原)地方は、緯度的な尺度でみれば東北地方とほぼ同じ。すなわち東北地方の気候と類似したものがありんす。
モズでもウグイスでもなく「クロウタドリ」??
また、夏鳥である「クロウタドリ」という説もあります。
クロウタドリはヨーロッパを中心に分布していますが、夏時期になると中国に飛来して囀る(さえずる)ことから、クロウタドリが候補として挙げられています。
クロウタドリは君の純白の赤ちゃんタマゴ肌のようにそれはそれは透き通るような美しい声を出す鳥として知られています。
梅子黄の日にち(期間)
- 太陽暦:6月16日〜6月20日頃
- 旧暦:五月節(五月の正節)