正月前となる前年の年の瀬あたりになると、スーパーの店頭などで正月グッズが並べられている様子が多く散見されます。
注連縄はじめ、正月を意識した食材、そして「鏡餅」です。
以下では鏡餅の名前の由来や飾り方のほか、あまり知られていない2段や3段になっている理由についてもお話ししましょう。
鏡餅とは?
鏡餅とは神仏へのお供えものであり、古来、特に正月に来訪するとされる「年神(歳徳神)」への捧げ物とされています。
一説では年神(歳徳神)の依り代とも言われます。
江戸時代の武家では、正月になると甲冑を飾り立て、その前に三宝に乗せた鏡餅を供したことから、別名で「具足餅(ぐそくもち)」とも呼ばれました。
そもそもなぜお餅を神仏に供えるのか?
元来、日本人は春になれば田を耕し、秋に収穫する暮らしを営んできた歴史があります。
農耕民族である日本人は米との縁は切っても切り離せない関係であり、生きていくために欠かすことのできない主食であることから、いつしか米には神の御霊が宿っていると考えるようになっていきます。
中でもお餅は米を蒸して丸めた手間のかかる特殊な食べ物であり、特別な日、つまり「ハレの日」に食べると精力が沸き立ち、新しく生命を活性化させることできる霊力がそなわった食物として重宝されてきました。
また、日本人は白い生き物など「白い物」を「神使(しんし/=神の使い)として神聖視していたことから、純白の餅も同様に神聖視されてきたというのも理由に挙げられます。
その特別な日に食べるお餅をまず先に神仏にお供えして先に召し上がっていただこうというのが、お餅を神仏にお供えする理由であり起源になります。
現今に至ってもこの風習は踏襲されており、正月といったまさにハレの日に用いる縁起をかつぐ食材として欠かせないものとなっています。
鏡餅の形が丸い理由
鏡餅が丸い理由は後述していますが、三種の神器の神鏡(ラーの・・おっと、八咫鏡!)もしくは、人の心臓をイメージして作られたとされていることから丸い形状をしていると云われています。
三種の神器は天皇を象徴する神器であることから鏡餅を祀ることで天皇、いわゆる神々への供物としたのかもしれません。
鏡餅の形から派生して「おとしだま」が生まれた
お正月になれば両親や親戚のオっちゃんやオバちゃんなどから「お年玉」をもらいますが、このお年玉の語源が鏡餅だったことはあまり知られていないと思います。
そもそもお年玉の語源とは、年神に捧げた鏡餅を下げるとき「おとしだま」とも呼ぶことから、これに端を発し、年神からの授かりものとして「お年玉」が誕生したと云われます。
現在ではあまり見られませんが、かつては鏡開きの際、お下がりのお餅を家長が「年神の御魂分け」として家族に分け与えたのですが、このお餅が「御年玉」もしくは年神の魂が宿った神聖なお餅ということで「御年魂」とも呼ばれます。
そして、この年神の御霊が宿ったお餅、すなわち「御年玉」「御年魂」を食べるために考案されたのがお雑煮と云われています。
鏡餅の名前の由来を知りたい!「鏡餅と呼ばれる理由」
その1.鏡と似たような形状をしているから
正月のお餅といえば鏡餅!鏡餅といえば丸い巻き巻きウンコのような形を連想してしまいますが、現今に至っては「切り餅」もしくは「角餅」という角ばったお餅の種類もあります。
ただ、元来、餅は手でコネて平べったく丸めたものを食べていたことから平べったい円形が本流です。
一方の「鏡」も古墳で発見されたものは丸い円形をしており、以降も現在に至るまで丸い形状が主流であったことから、鏡も円形のイメージが定着します。
以上をまとめると、平べったい円形のお餅は=鏡を連想させることから、いつしか「鏡餅」と呼ばれるようになっていったというワケです。
神社によく行けば「神鏡」と呼ばれる丸く平べったい鏡が神の依代として祀られていますが、一説にはこの神鏡に類似している鏡餅を神鏡に見立てて、神の依代としてお供えしているとも言われています。
その2.大物主神の発言によるもの
垂仁天皇の御代、奈良県桜井市三輪山に鎮座する大物主神(大国主大神)が、ある日、娘である「大田田根子(おおたたねこ)」に「元旦に荒御魂の大神に紅白餅を供すれば幸福が舞い込む」と伝えたことが起源になるようです。
ただ、この話は信憑性が薄く、あくまでも俗説として捉えられていますが、一応、鏡餅の起源とも見られているようです。
鏡餅を飾る前に要チェック!「年末の大掃除は終わった?」
鏡餅をお飾りする前の最大の注意事項があります。すでにタイトルに記載しているように年末の大掃除が終わった後にお飾りするが鉄則です。
鏡餅をお飾りした後に大掃除してしまうと、大掃除の時に出た誇りが鏡餅に降りかかってしまい、年神様が寄り付かなくなる元凶にも成り得ます。
年末の大掃除に関しては下記ページをご参照ください。
鏡餅いつから飾る?「鏡餅を飾る日」
鏡餅はじめ、注連縄や門松などのお正月飾りは松の内と呼ばれる期間内に飾り、松の内の期間が終われば神棚から降ろして、それを一家団欒の席のもと、全員で食べます。
神棚から降ろした鏡餅は神前に供えたことから霊力が宿るとされ、霊験あらたかなご利益が得られると古来、信じられています。
- 一般的な松の内の期間:12月13日~1月7日
- 鏡餅を飾りつけるのに理想的な期間:12月13日から新年が開ける前まで
すなわち前年の12月13日以降、煤払い(大掃除)が終わった後にお飾りするのが良いと言えるでしょう。
鏡餅を飾るのに理想的なオススメの日は「8」のつく日?
12月18日や28日の「八(8)」は古来、末広がり(上から下に向けて広がっていく)ため、大変、縁起の良い数字とされ、様々な言葉が生み出されています。
例えば、八重歯、八咫烏、八十八夜、八方除け、八尋殿、八坂瓊勾玉、八重雲..etc
以上のようなことから古来、縁起が良い8の日にお飾りするのが吉とされ、すなわちこれを年の瀬に当てはめると12月18日や28日ということになります。
ちなみに数字の8は無限大を表するとも云われます。
鏡餅を飾るのを避けた方が良い日
- 12月29日
- 12月31日
12月29日は避けた方が良い理由
12月29日は「二重苦」とも読むことができ、あまり縁起の良い日とされていません。
これを鏡餅に例えると「苦餅(くもち)」と呼称し、下記の「一夜餅」と合わせて忌み嫌われた歴史があります。
12月31日は避けた方が良い理由
12月31日は古来、翌日が元旦であることから「一夜飾り」と云われます。
現在でも一部の家庭において、お餅つきをして鏡餅を作る家庭が見られますが、12月31日に突く餅は「一夜餅(ひとよもち)」と呼ばれ、これらの日に餅を突くのは忌み嫌われました。
「一夜飾り」とは、名称の通り、一夜でお飾りすることなのですが、面倒だから一夜で飾ったとも見ることができ、神仏に対して失礼にあたるとされます。
したがって12月28日まで飾り終えるのがマストです。
鏡餅いつまで飾るのが良い?
鏡餅は松の内の期間お祭りしますので、松の内の期間が終われば神棚から降ろします。
一般的には鏡開き日とされる1月11日に神棚から下げます。中には関東地方などを例に1月15日が鏡開きの日の地方もあります。
鏡餅はいつ食べるのがいいの?「鏡餅を食べる日・時間」
鏡餅を食べるのに最適な日は一般的に鏡開きの日とされる「1月11日」以降に神棚から降ろして食べるのがオススメの食べ方です。
ただし、上述した通り、関東地方などを例に1月15日以降が鏡開きの地域もあります。
鏡開きとは、鏡餅を「切る」もしくは「割る」などして開くことです。また、鏡餅を食べることを「歯固め」と呼称します。
歯固めとは固い物を食べることによって健康長寿になれるとされる信仰のことです。昔は歯を丈夫に保つことが長寿の秘訣であったことに由来するものです。
鏡餅のオススメの食べ方
鏡餅は神棚から下げたものを切らずにそのままの形状で食べるのが吉とされています。この理由は神様が刃物を嫌うためです。
また、鏡餅を切ることは年神様と縁を切る事に等しいとも見られることから、そのままお鍋へ入れて茹でるなどして食べるのがオススメの食べ方です。
正月であれば”お雑煮”や”ぜんざい”の中にバシュっ!・・と、ブチ込んで煮立てて食べるのもオススメの食べ方です。
電子レンジでチン♪して、少し柔らかくしてからオーブンなどで軽く焼き上げ、お砂糖などを上からパラパラと散らして食べるのもオススメの食べ方です。ウフ
鏡餅を割って食べたい!どうしたらイイ?
鏡餅を割って食べる場合は、包丁を使用せずに手や木槌などで鏡餅を叩いて割ります。これを雑煮にブっ込んだり、「ぜんざい」などの汁粉にブチ込んで胃袋へシコ流しを行ったりします。
鏡餅を飾る意味とは?
鏡餅をお飾りする意味や理由は上述したとおり、神仏へのお供え物として、もしくは年神(歳徳神)へのお供え物として供する目的があります。
餅は米、米には霊力が宿るとも云われますので、注連縄と餅とを飾ることで邪気を払い、不浄なものが入ってこないようにしているとも云われます。
正月は年に1回の「ハレの日」という特別な日、新たな生命の息吹を吹き込み、新年を活力に満ち溢れた状態で臨むためにはやはりリフレッシュすることが必要不可欠です。
そこで1年分の邪気を祓い、注連縄を飾ることによって清浄な空間を創出し、年神が降臨しやすいように斎場を整えるといった意味合いもあるでしょう。
こうしてまた新たな1年を精気とやる気に満ちた状態で臨むことができ、これを毎年のように繰り返すワケです。だとすれば「正月」というイベントは人が生きていく上では欠かせない存在であると言う見方もできます。
鏡餅を飾ることで得られるご利益ってあるの??
年神がもつとされるご利益を得られる
鏡餅は歳徳神と呼ばれる年神へ供する神饌(しんせん/おそなえもの)であることから、年神が持つとされるご利益を授かることができます。
年神は別名で「歳徳神(年徳神)」とも呼ばれることから、縁起が良いとされ良縁のほか、開運、健康長寿のご利益があるとされています。
お餅がよく伸びることから延命・長寿のご利益も!!
鏡餅は固いのですが、クソ鍋でグツグツ煮ることで、ネっと〜りと柔らかくなり、箸でツマもうとするとニぃョぅぉ〜っと長く伸びます。
すなわち、「良く伸びる=長寿・延命」に通じるとされており、延命長寿のご利益もあるとも云われます。
鏡餅を飾る風習はいつ生まれた?「鏡餅の起源」
鏡餅を神棚などの特殊な場所へ飾るようになった風習の起源は実のところ、いっさい不明とされています。
ただ、平安中期に編纂された「源氏物語(げんじものがたり)」の中に「歯固めの儀式に鏡餅を用いるために取り寄せた」などの一文が残されており、これはすなわち平安中期にすでに鏡餅という文化が存在していたことになります。
ただし、この当時は現在の家庭内で見られるような神棚などへ飾る様式は見られず、現在のような神棚へ飾る様式は、おおよそ室町時代以降になってからのことだと推察されています。
鏡餅を飾る場所
鏡餅が一般的によく飾られる場所とお飾りする鏡餅のサイズ
よく飾られる場所 | 鏡餅のサイズ |
神棚 | 小さな鏡餅 |
仏壇 | 小さな鏡餅 |
リビングルーム | 大きな鏡餅 |
床の間 | 大きな鏡餅 |
意外に鏡餅を飾ると運が舞い込むオススメの場所
オススメの場所 | 鏡餅のサイズ |
子供部屋のデスクの上 | 小さな鏡餅 |
トイレの棚の上や窓枠の下 | 小さな鏡餅 |
仕事部屋のデスクの上やデスク上の神棚 | 大きな鏡餅 |
玄関 | 小さな鏡餅 |
納戸 | 小さな鏡餅 |
年神は家庭内に訪れますので、不浄とされるトイレなどにお飾りすることで不浄さを祓い清め、運気を上昇させることができるとも云われます。
また、玄関などは家庭内の見取図で示せば下座にあたりますが、下座に鏡餅を置いて年神様の降臨を促すことで、外からの邪気を祓い家庭内を清浄にしてくれるとも云われます。
注連縄で邪気の侵入を防ぎ、年神の降臨によって不浄なものを祓う・・といったことでしょうか。
納戸に関しては、人があまり行く事がない上、内部が真っ暗なので、鏡餅をお飾りするのには不適切な場所のように思えますが、納戸には古来、神が宿るとされることから、納戸に鏡餅をお飾りするのも良いとされています。
鏡餅を飾るのに適さない場所
鏡餅は基本的にお飾りする個数が定められておらず、好きな数をお飾りしても良いとされています。
このため、家中の玄関先やトイレ、リビングや床の間などお好きな場所にお飾りすることができます。
ただ、仮にも神様に供するものなので騒がしい場所や極端に不浄な場所は避けるべきです。
例えば人が行き交い誇りが舞い込む廊下やオーディオコンポ、テレビの上などにお飾りするのは避けるべきでしょう。
鏡餅を飾る方角はあるの?
当年の恵方の方角へ向けると運気上昇!
鏡餅は年神の神座でもありますので、年神が座する方角へ向けて祀るのが運気を上昇させるキッカケになると言われています。
年神が座する方角は一般的には「恵方(えほう)」の方角です。恵方は年度によって異なるので当年の恵方をチェックしてみてください。ウフ
ちなみに恵方の基準は4つです。この4つと十干(じっかん)を合わせることで当年中の恵方が決定います。
- 十干:甲/こう・乙/おつ・丙/へい・丁/てい・戊/ぼ・己/き・庚/こう・辛/しん・壬/じん・癸/き
十干は中国で生まれた占いじみた、いわゆる文化の1つです。十干を用いて吉凶を占ったり、暦の作成にも用いられます。
南向き・東向きに向けると良いとも!
昔からの俗説では南向き、東向きに鏡餅を飾るのが良いとも云われますが、これはあくまで俗説です。
鏡餅は基本、家宅内の神棚はじめ、玄関や床の間などにお飾りする例が散見されますが、それら各場所が必ずしも一意の方角にあるワケではないと思います。
実際のところ、確かに年神の居る恵方に向けて飾るのは運気UPのキッカケに成り得ますが、特に限定した鏡餅を飾る方向というものはなく、大事なのは年神様を迎えようとするその気持ちだということです。
えぇっ?!鏡餅には数え方があった?!
上述したとおり、鏡餅は重ねて飾ることから、「一重ね(ひとかさね)」「二重ね(ふたかさね)」などと数えるのが正式です。
もちろん1個や2個でも間違いではありませんが、おおむね「個」を用いるのは鏡餅を解体したときに用います。