正月飾りと言えば、玄関に飾る飾りや鏡餅を思い浮かべますが、他にも沢山の正月飾りがあることをご存知でしょうか?
今回は、様々な正月飾りや正しい正月飾りの飾り方、なぜ正月飾りをすべきなのかなど正月飾りに関するあれこれを細かくご紹介します。
どうして正月飾りをつけるの?~正月飾りの本当の「意味」とは~
そもそも、正月は、歳神様と呼ばれる、その年の神様をお迎えする為の準備です。
神様が迷わないような目印にもなり、神様が宿る場所の意味もあります。
多幸を願う祈りのしきたりは古くから受け継がれてきた大切な習わしです。
正月飾りはいつからいつまで?関東と関西で違う?
正月飾りを飾る時期は、古来の暦で「正月事始め」を意味する12月13日以降ならいつ出しても問題ないという説もあります。
しかし、最近では、クリスマスが過ぎた12月26日頃から飾り始める家庭が多く、特に末広がりとして縁起の良い「8」がつく、12月28日や、切りの良い数字である12月30日に飾るのが良いとされている説が一般的です。
12月13日以降ならいつでもいいとはされていますが、12月29日にお飾りを飾ることは、「苦を待つ」につながり、「二重苦」とも読み取れるため、縁起が悪いと言われています。
また、大晦日の12月31日は「一夜飾り」と言われ、こちらの日も縁起が悪いとされています。せっかくのお飾りも縁起の悪い日には飾りたくないですし、何よりも歳神様に失礼があってはいけません。
飾る時期は注意しましょう。
では、外すタイミングはいつがいいのでしょうか。
一般的には「松の内」と呼ばれる、正月を祝う期間であり、松飾りを飾っておく期間が終わったら外します。
関東では、1月7日までとされ、6日の深夜または、7日の早朝に取り除きます。
関西では、1月15日がその期間にあたり、14日の深夜または、15日の早朝に取り除きます。
「松の内」は新年の挨拶を交わす期間にもなっていています。
ちなみに、年賀状も松の内までに届くようにし、それ以降は寒中見舞いとして出します。
正月の色々な風習の期間を考えるなら、「松の内」を覚えておくと便利です。
正月飾りの処分の仕方
松の内が終われば、正月飾りを処分します。
昔の日本の風習では、小正月である1月15日に、「どんど焼き」または、「どんと焼き」と呼ばれる火祭りが地域ごとに行われていました。
「どんど焼き」は、田んぼや河原、神社などで、竹や木の棒でやぐらを組み、集められた正月飾りを焼いて奉納します。
そして、その火で、木の枝や竹に刺したお餅やお団子を焼き、食べるという行事です。
「どんど焼き」の火や煙に当たると、1年間健康に過ごせるようになると言われ、振る舞われるお餅や、お団子を食べると虫歯にならない、健康になると言われています。
また、灰は魔除けや厄除けの力があり、家の周りに撒くと良いとも言われています。
今では、なかなか見かけなくなった風習ですが、なんともご利益が多い習わしです。
本来「どんど焼き」には、「正月にお迎えした歳神様を、お帰りになる際にお送りする」という意味があります。
気持ちよく、歳神様にお帰り頂いて、また来年も我が家にお越しいただけるように振る舞うことは必要なことです。
ちなみに、最近では、正月飾りだけではなく、御守りや破魔矢、お札なども焼いてくださるところも多いですし、だるまや書初め、人形にご祝儀などで頂いた熨斗袋などの捨てにくいものも受け付けて下さる場合があります。
詳しくは、地域や地元の神社などに確認をしましょう。
もしも、ちかくの地域で「どんど焼き」を行っていない場合や、用事があって行けなかった時には、ご自宅で処分することもあるでしょう。
その場合には、半紙を敷いた上に正月飾りを置いて、塩を振りながら感謝の気持ちを捧げてから処分するのがお勧めです。
ご自宅に庭がある方は、庭の土を塩とお神酒で清めてから、その土の上で正月飾りを焼くという方法もあります。
その場合には、出た灰を、厄払いとして家の周りに撒きましょう。
歳神様が家にやってくる目印として活躍した神聖な正月飾りは、最後まで神聖なものとして扱いましょう。
正月飾りの種類・意味
正月飾りと言っても、その種類は様々です。それぞれ縁起を担いだ理由があります。
「玄関飾り・門飾り」
正月飾りと言って一番に思いつくのがこの「玄関飾り」でしょう。
新しい年の福をもたらしてくださる歳神様が、我が家に辿り着くために迷わないようにする道しるべとして、門や玄関に飾ります。
最近では、スタイリッシュで簡素化されたものも売られていますが、正式にはいくつかの縁起物がついています。
「玄関飾り・門飾り」についている縁起物
橙(だいだい)
橙(だいだい)が、「代々(だいだい)」の音と同じことから、この家が「代々(だいだい)続くように」という子孫繁栄の願いを込めてつけています。
伊勢海老
「伊勢(いせ)」が、「威勢(いせい)」の音に似ていることと、海老の腰が折れた姿が長寿の翁に似ていることから、不老不死を願う縁起物としてつけられています。
昆布
「昆布(こぶ)」の音が「よろこぶ」に通じとされていることから縁起物に使われます。
また、昔は食用の海草のことを「め」と呼んでいて、とりわけ昆布は、他の海藻よりも幅が広いため、「ひろめ」とか「えびすめ」と呼ばれていました。
そのため、「ひろめ」が「ひろまる」に繋がり、福が広がるような意味もあるようです。
ちなみに、煮物などに昆布が結んで使われるのは、「むつびよろこぶ」とされ、家族が仲睦まじくあることを願ったことからきています。
ゆずり葉
ゆずり葉は、春になると枝先に若葉が出て、前からあった葉がそれに譲るように落ちることから、その名がついた葉です。
その様子が、親から子へと代々家が続いていくことと重ねて縁起物になっています。
水引
水引とは、和紙を細長く切り、紙をよって、糊を塗り、乾かして紐状にしたものです。
正月飾りなどのおめでたいことに使う場合は、5本、7本、9本の奇数をまとめて使い、紅白や金銀の色にして、右に濃い色をもってくるように飾ります。
水引には、魔除けの意味や、縁を結び付けるという意味あることから、強く引けば引くほど結ばれるものが多いのも特徴です。
幣束(へいそく)
正月飾りについている、白や紅白の垂れ下がった紙のことを言います。
外からの災いや厄を、この紙に吸収させて家の中に災いのような悪いものが入るのを防ぐ役目があります。
形も様々で、人形や馬形など色々な形があります。
裏白(ウラジロ)
裏白とは、正月飾りに使われるシダの葉のことです。
葉の表は、濃い緑色で常緑なことから、長寿を意味します。
葉の裏側は、白いことから「潔白」を表し、相対して並ぶ葉の形状を夫婦に見立てて、夫婦共に白髪まで添い遂げられるようにとの願いも込められています。
松竹梅
慶事や吉祥のシンボルにもなっている松竹梅は、もともと中国の画家に好まれる、「歳寒三友(さいかんさんゆう)」と呼ばれる画題のひとつでした。
それぞれ寒さに強い植物で構成されています。
松は寒さに強く、葉も常緑であることから「永遠の命」を表し、樹齢も長いことから不老長寿とも結びつけられています。
竹も雪の中でも青々とし、葉を落とさないことや真っ直ぐに伸びる性質から「誠実」や「強い志」として縁起良いとされています。
梅は、春に先駆けて咲くことが「出世」、「開運」の象徴とされ、また、香りの良さ、歳神様が降臨する木ともされています。
「門松」
新年の季語にもなっている、門松は、正月に家や会社の前などに立てられる松や竹を用いた正月飾りです。
竹を三本用いて周りに松をあしらい、縄でしめた大きなものから、松を門に釘で打ち付ける簡単なものまで色々あります。
歳神様をお迎えするときに、歳神様がよりつく場所とされています。
昔から「松は千歳を契り、竹は万代を契る」と言われ、神様が宿る場所が永遠に続くことの願いが込められています。
また、玄関を清めて、邪気などの悪いものが家の中に入らぬようにする役目もあります。
もともとは、松だけではなく、杉や椎、榊と言った常緑樹が用いられていましたが、しだいに松を使うことが多くなったようです。
「鏡餅」
鏡餅は、歳神様に餅を供える正月飾りです。
歳神様は穀物の神でもあり、鏡餅は神様が宿る、依り代(よりしろ)にもなりうることから、大切な正月飾りのひとつです。
昔の青銅製の丸形であった鏡に形が似ていることから、その名がついたと言われています。青銅製の鏡は神事などにも用いられるだけではなく、三種の神器の1つである、八咫鏡(やたのかがみ)が有名ですが、鏡餅も三種の神器と重ね合わされています。
三種の神器の1つ目は、ご紹介したように八咫鏡を餅に見立て、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)は橙に、天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)は串柿を見立てたとされています。
平安時代にはすでに存在していましたが、現在のような形で供えるようになったのは、室町時代以降です。正月が終わり、飾り終えた餅は、「鏡開き」を行って、神様のお下がりとして頂きます。
「鏡」は円満を表し、「開く」は末広がりを意味するので、手や木槌で食べやすい大きさに分けることが作法です。
「注連縄(しめなわ)」
天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸から出てこられた際に、二度と天岩戸へ戻られないようにするために、他の神様が尻久米縄(しりくめなわ)を張り巡らしたことが由来とされています。
「縄張り」や「結界を張る」意味があり、神社の注連縄も「魔除け」や「神様の域と俗世を区別する境界線」として使われています。
「生け花」
普段は飾らなくても、正月には生花を飾るという方が多いかもしれません。
正月の生け花には縁起や元を担いだ花を生けて、正月飾りにすることが多いです。
松や竹の縁起は先ほどご紹介しましたが、他にも正月を盛り上げる花はいくつかあります。
お勧めの花の一部をご紹介します。
正月に生ける花の種類
千両
濃い緑色の葉に赤い実をつける千両は、「利益」や「富」と言った花言葉があり、沢山の実をつけることも縁起が良いとされています。
ちなみに、似た植物に万両や十両がありますが、上向きに実がつくのが千両、下向きに実がつくのが万両、小さく、実の数も1、2個しかついていないのが十両と見分けると良いでしょう。
南天
こちらも赤い実がつく木ですが、実が千両や万両に比べて小さく、葡萄の房状につくのが南天です。
「難を転じて福となす」と通じるとして縁起の良いものとされています。
菊
葬式にも使われるので、めでたい場所には相応しくないと思われがちですが、菊は縁起の良い正月花です。
もともとは、日本にはタンポポのような野菊しか存在しなかった菊ですが、平安時代に中国から入ってきて、鎌倉時代に後鳥羽上皇が菊の花を好んだことから「菊紋」は、皇室の家紋として今でも天皇家に伝わっています。
「菊を飾ると福が来る」とも言われています。
葉牡丹
かつては、「牡丹」が正月花の定番でした。
しかし、牡丹よりも手頃で、花言葉も「祝福」や「利益」と縁起のいい葉牡丹は、最近の正月花の定番となりつつあります。
紅白の色合いも、正月にはピッタリです。
葉牡丹は、原産地がヨーロッパで、日本には江戸時代に伝えられました。
「ハナキャベツ」という別名も持つ、キャベツやブロッコリーの仲間です。
食用の野菜として輸入されて、観賞用の植物として改良されたため、実は食べることができます。しかし、見た目の美しさ重視に改良されてきたため、美味しくはないようです。
【補足】念仏の口止め
「念仏の口止め」や「念仏の口明け(念仏の口開け)」という言葉を耳にしたことはありますかぃ?
新年をリフレッシュした新たな気持ちで迎えるために神棚にお供え物をしたりと、年神様をもてなすための様々な準備を行いますが、昔からの俗習として念仏を唱えるのを控える時期があります。
その時期というのが昨年の12月16日〜新年の1月16日までの期間です。
この期間は年神様が訪れるとされる期間であり、年神様が念仏を嫌うという俗信から念仏(お経)は唱えるのは12月26日までとしたものです。
理由は単純明快で年神様は仏ではなく、神道の神様だからです。
その後、年明けの1月16日は「念仏の口明け(念仏の口開け)」と言われ、この日を境に再び念仏を唱えて良い期間とされます。つまり約1ヶ月間、念仏(お経)を唱えていけないことになります。
なお、このような風習は全国的に見られるものではなく、地域によるものです。兵庫県南部地方では12月11日〜のようです。
まとめ
正月には、沢山の行事や習わしがあります。
歳神様が迷わず我が家に来て下さるように、そして沢山の福が舞い降りるように行う正月飾りは、とても重要な風習です。
良い1年になるように、丁寧に歳神様をお迎え、お送りしましょう。
Writing:YUKIKO-加藤