神社に行くと、大抵の場合、参拝所にあるのが賽銭箱ですが、その上にたいていの場合、紐付きの鈴があります。
この鈴はお寺には設置されていないので、「どうして、お寺には無いのに、神社には鈴があるの?」と思われるかもしれませんね。
以下では
「神社にはなぜ鈴があるのか?」
「振って鳴らす理由は何か?」についてせまってみます。
■鈴の音=祓い清める音
神道の儀式において、鈴は至るところに登場します。
現代では、わかりやすいところで言うと、七五三や神式の結婚式、厄払いのときなどに、巫女が神楽を舞ったり、参拝者の頭上などで鳴らすことがありますね。
神道において、鈴の音は「邪気を祓い清める効果」を持っています。
仏教でも、神道のような鈴ではありませんが、チぃ~ン♪で有名な「おりん(お鈴)」を代表的に「金剛鈴」、「修験者が持つ法具の錫杖」といった「澄んだ音の鳴るアイテム」が用いられます。
この透き通った良く通る音が、古代では、もろもろの魔をしりぞけるものと考えられていたのでしょう。
ちなみに、神道や陰陽道で行う「拍手(かしわで)」も、破魔の意味を持っています。
破魔に関して言えば、例えば神社では開運アイテムのひとつとして、破魔矢が授与されていますが、これもそもそもは、弓弦を引いて音を鳴らすことが破魔の意味合いであり、これに由来して破魔のアイテムとして授与しています。
いずれにしても古代の人は、美しい音、響く音に、魔除け、厄除け、清めの意味合いを見いだしていました。
神道で今も鳴らされる鈴には、参拝者の持ち込む様々な厄を祓い清める役割があるのです。
■本殿にいらっしゃる神様を呼ぶ
神社において神がどの場所にいらっしゃると考えられているかといえば、実はお賽銭箱がある拝殿ではなく、多くは拝殿の奥にある本殿に、ご神体があり祀られています。
拝殿から奥をのぞけば本殿が見える場合も多いのですが、いずれにしても神は拝殿よりも奥にいらっしゃるものであり、本殿の扉も多くは閉められています。
人が参拝を行う際には鈴を鳴らし、神様に「参拝に参りました」と、お知らせする役割もあると言われているのです。
代表的な例で言えば、巫女さんがお神楽を奉奏する際、よく鈴を手に持っていますが、これこそがまさに神様を呼ぶために持つ鈴であり、自らの御身を神様の依代とするために用いられます。
鈴を鳴らして神様にご降臨していただくようお知らせし、踊り(舞/=お神楽)を奉奏して神様に楽しんでいただき、その対価として御神徳を授かるようお願いします。
■寺院に鈴がなく、鐘だけがある理由
鐘の音は、梵鐘(ぼんしょう)と呼びますが、古い時代には周辺の人々に時間を知らせる役割を担っていました。
その他、霊の供養、煩悩の払拭、僧侶に自分自身の立場を再認識させる、功徳を積む等の役割があります。
しかし、仏様を呼ぶような役割を持った存在ではありません。
実は寺院に鐘(梵鐘)が無い理由は以下のような伝承があるからだと云われています。
「仏様は千里眼を持ち、すべてを見通せる」
「よって、わざわざ鈴を鳴らされるまでもなく参拝者のことはすべて見えている」
確かに、現代までに伝わる数々の伝説を紐といても、日本の神様は中国やインドの神々ような特徴的な容姿もなく、特殊な能力を持つという話も少ないように思われます。
どちらかと言えば、非常に人間じみている感じがします。
中国やインド、その周辺諸国は日本とは異なり、神々から妖魔などの話が多数、受け継がれ、普通では理解できないような伝承が多く現存している点が非常に面白いと言えます。