神社やお寺の参拝について、「生理中の女性は参拝してはいけない」というお話があるのをご存じ?
一体それは本当なのでしょうか。特に尼寺には尼さん、神社には巫女がいますが、そういった人たちはどうしているのでしょう?
今回は、生理中の女性が神社を参拝するのは良いのか、良くないのか……その本当のところを探ります。
生理中の女性は神社を参拝してはいけないのか
なぜ、参拝してはいけないと言われるのか? という点は少々置いておいて、生理中の女性が本当に神社を参拝してはいけないのか、どうかについて、まずは結論を出しましょう。
生理中でも神社参拝はできる
生理中の女性でも、寺社参拝そのものは行うことができます。
もっとも、過去には、生理中には参拝してはいけない……とする説が確かに存在おり、むしろそれが一般的なこととされていました。
なぜ良いのか? むしろ過去にはなぜいけないと言われていたのか? といった点については、これから「生理中の女性は参拝してはいけない説」の歴史や理由をご説明する中で、おわかりいただけるでしょう。
巫女や神職も生理中に奉職あり
巫女はもちろん女性に限られますし、現代では女性の神職も少ないとはいえ増えてきています。
このような方たちも、生理中だからといって奉職を休むことはできない神社のほうが多いでしょう。
まれに巫女の手が充分に足りていて、規律も厳しく、生理中はお休みで……という神社もあるようですが、少数派であることは確かです。
少なくとも巫女については、生理中の奉職に制限を設けており、本殿に立ち入らない、神楽舞など神前での仕事、参拝者の前に出るような仕事は行わない、としているケースが多数見受けられます。
但し、これもあくまでも「多数見受けられる」に留まります。巫女の人数により、生理中だからといって職の内容に制限をしている余裕はない……という神社も、もちろん存在するはずです。
生理中に参拝できない理由
生理中に女性が参拝してはいけない、とする説はどこから生まれたものなのでしょうか。
血=穢れだから
生理、つまり月経においては、女性のからだから否応なしに血が流れ出るという状態は否定できません。
そして、古代から、血=穢れである、という思想は日本に深く根付いてきました。
したがって、生理中の女性は穢れているために、神前に詣でることは許されない、鳥居を潜ってはならない、というような思想も、当然のように根付いてきたのです。
但しこれは単純な女性蔑視であると受け取ることはできません。
なぜなら、男性であってもケガをして血が出ているような状態での参拝は、穢れているため控えるべきものでありましたし、肉魚などのいわゆる「なまぐさもの」も、寺社で供されるには適していない食べ物として扱われます。
血、さらに「死」は穢れの代表格として、寺社において避けられてきたものであり、これは性別を越えて適用される古代的な概念のひとつです。
ただ、月に1回、数日にわたり、何もしていないのに否応なしに血が出る女性という性別に対しては、やはり穢れのイメージがつきまとったり、あるいはいつ穢れが始まってしまうかわからないのですから、後年の「女性=穢れ」「女人禁制」等の文化につながったものと考えられます。
言葉さえも穢れているとして避けられる
生理、生理と先ほどから連呼していますが、もちろん時代によって呼び方は違いました。
現在でも正式名称(?)は「月経」ですが、「月経」という言葉は古くは古事記にも見られ、これを「つきのさわり」と読んだことがわかっています。「さわり」は「障り」、つまり障害ということですね。
気になる方は、古事記、景行天皇の段、日本武尊が生理中の美夜受比売(ミヤヅヒメ)とベッドで仲良し(!)するくだりをご覧ください。
余談はさておき、現代でも神社においては、「生理」という言葉を使わず、「月のもの」など、ストレートな言葉を避けるのが通常です。
進歩した現代は一般の人には制限なし!
昔は、当たり前のことですが生理用品の技術は現代のように進歩していませんでした。
江戸時代まではふんどしを締め、その中に布や綿を入れたりして凌いでいました。
平安時代などはこのふんどしを「月帯(けがれぬの)」と呼びましたが、ふんどしだけではどうにもできませんから、部屋に籠りきりで人に会わないのがあたりまえ。
高貴の女性や女官の場合は、生理開始後8日の間は離れ(あるいは実家)に籠り、忌み明けには髪まですべて洗って部屋を出たと言われています。
当然のように、モレの心配から解放されることはなく、とても神社の参拝などできたものではありませんでしたが、現代ではそんな心配もほとんどありません。
体調が問題なければ、神社やお寺の参拝は可能です。
但し……
古代から、血=穢れ、とされたのは、血が出るような状況は「気涸れ」つまり気力が涸れている状態であると考えられたから、とも言われています。
このため、気力が不足した人に参拝させなくて済むよう、禁止事項として扱われたのだとも。
生理中は気力が伴わず、体力的に制限がかかるのも当然のこと。
生理中の参拝は、自身の体調、体力と相談のうえ行いましょう。