放生会とは?いつ?意味や由来、縁起物・読み方など!

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放生会は、京都・福岡市民の方々にとっては馴染み深いイベントですが、他地方の人では「聞いたことがない」という方もおられるかもしれません。

関東圏では読み方もおぼつかないところですが、名物のおはじきからお化け屋敷までしっかり解説していきますよ! この機会に、放生会を一緒に読みながら紐解いていきましょう。

筥崎宮公式Twitterより

放生会とは?

放生会とは、京都や福岡・博多の秋祭りとして有名なお祭りの一つです。読み方や由来は後述しますのでそちらを参照してください。

福岡の放生会は「山笠」、「どんたく」と並ぶ3大祭りとして非常に有名。筥崎宮(はこざきぐう)の参道で開催されます。屋台なども沢山出ていて、とりわけお化け屋敷など全国でも類を見ないような屋台と、後でご紹介する「おはじき」等の縁起物が注目を集めます。

一方、京都では石清水八幡宮で開催される放生会が有名です。「石清水放生会」という名称で始まったお祭りですが、歴史的には、朝廷の命令によって開催される「勅祭(ちょくさい)」である「石清水祭」という、由緒正しいお祭りです。これについても詳細は後述します。

放生会の読み方

放生会と書いて「ほうじょうえ」と読みます。

また、福岡では「ほうじょうや」と読むこともあり、どちらも正解です。

決して「ほうじょうかい」ではないのでお間違えないよう!!

放生会の意味、由来

それでは、放生会の意味や由来を確認してみましょう。

放生会の思想的な発祥は古代インド

放生会は、古代インドの思想に端を発すると考えられています。これは古い仏教の経典で『金光明最勝王経』というものに、流水長者(るすいちょうじゃ)という人のエピソードが残っていることに基づきます。

経典によれば、流水長者は釈迦の前世の姿であり、水涸れしそうな池に居たたくさんの魚を助け、説法をして放生した(つまり放してやった)、すると魚たちは天の世界へ生まれ変わって、流水長者に恩返しをした、ということです。

仏教的な発想の1つとして、命への哀れみと救済というものがありますが、放生会はそれがよく現れたお祭りと言うことができるでしょう。

儀式としての放生会の発祥は中国?

お祭りとしての放生会は、中国で始まったと考えられています。

放生会に類する記述が見られる最古の書物は『漢書』芸文志の中に存する『列子』で、ここには「元旦に生き物を放して恩赦をする」という趣旨のことが書かれています。生き物を放すというのは、狩猟で捕まえた生き物という意味でしょう。

『漢書』の成立年代は、後漢・章帝の時(西暦75~88年頃)ですので、『列子』は相当古い文献ということになります(さらに『列子』については偽書論争もあります)。ただ、放生会についてはこの『列子』にあるような、生き物を放してやるという恩赦的思想がその基になっていることは間違いがなさそうです。

その後、放生会という仏教儀式が始められたのは、天台宗の中国における開祖であった智顗(ちぎ。生538年~没598年)の影響があったと言われます。智顗は漁師が売れない魚(雑魚)をそのまま捨てているのを見て、先述の流水長者のエピソードを思い出し、ポケットマネーでこれを買い取って「放生池」に放した、と言い伝えられています。

この慈悲の心をあらわすお祭りが放生会です。中国でも仏教のお祭りとして行われますが、その後日本へも伝わったものと考えられます。

日本の放生会は天武天皇の時代から

日本における放生会の由来は天武天皇の時代、677年にまで遡ります。『天武天皇記』には、天武天皇が諸国へ詔を下して放生を行わせたことに始まるという記述が残されています。

殺生を戒める風習はそれ以前にもあり、推古天皇の時代(611年)、『聖徳太子伝暦』の記録では、聖徳太子が天皇の遊猟について苦言を呈した、とのこと。後年、689年(持統天皇)には禁猟地が設けられ、「放生」を定期的に行うようになったと伝えられます。

聖武天皇(生701年~没756年)の時代には、殺生をしないこと、無闇に命を取らずに温情を見せることが、寿命を延ばす、病気に罹患しない……といった直接的な利益をもたらすものとして考えられ始めました。

聖武天皇の治世は様々な意味で高いハードルが多く、例えば天然痘が大流行を見せて、国民ばかりでなく政府中枢の人間がかなり病死に見舞われたり、災害が多かったり、しかも藤原家の権力争いでクーデターが起こったり失敗したりと、本当に様々なことがありました。不可抗力的な災難に立ち向かおうと、仏教への帰依がかなり深まった時期でもあったのです。

現代に繋がる放生会は宇佐神宮が始まり

最初のうちは、病気退散、寿命を延ばす、といった実益を目的として、いわば政府のイベントとして行われていた放生会。これが、720~725年頃、聖武天皇の時代に「神社のお祭り」となります。

切っ掛けとなったのは政府による大隅、薩摩(現在の大分~鹿児島)における、隼人(九州の異民族)の反乱でした。反乱鎮圧の後、隼人の慰霊を行うように!という八幡神の託宣によって、最初の放生会が大分の宇佐神宮で行われました。年代としては聖武天皇在位の時代になるようです。

これもやはり、慰霊や、死者の霊を祀ることが、世情の安定につながることを願ってのイベント化と言えるでしょう。

最初の放生会は宇佐神宮で行われたとされますが、宇佐神宮の社殿造立は725年と伝えられていますので、ちょうどこの創建の頃が、放生会の始まりとリンクしていると考えられます。(宇佐の地に八幡神が最初に示顕したのは571年であったため、この地では社殿はなくとも既に八幡神が祀られていました)

その後、863年(貞観4年、清和天皇在位)に、京都の石清水八幡宮で放生会が始められます。948年(天暦2年、村上天皇)が勅令をもって、石清水八幡宮の放生会が勅祭(天皇の命令によって行われるお祭り)として執り行われるようになりました。

現在では、収穫祭や感謝祭の意味を込めて、全国の寺院や宇佐神宮をはじめとする全国の八幡宮などで催されています。

放生会は仏教イベント?神事?

神事としての放生会はそもそも、八幡神の託宣によって、宇佐神宮で始まりを迎えたことは先述のとおりです。しかし、中国、インドにまで歴史を遡ると、放生会の起源は仏教的なところにあるはず……。ここに疑問を覚えた方も多いでしょう。

「八幡神」というのは、日本の神様ではないのか? というわけですね。

八幡神は、別名を八幡大菩薩と言います。いわゆる八幡神社に祀られている神様です。宇佐神宮が、日本の八幡神社の総本宮です。

八幡神の成立には諸説ありますが、元々、「八幡」の「幡」には「神の依り代(旗)」の意味があり、読み方は「ヤハタ」であったと考えられています。さらに「八百万」と言うように、「八」には「たくさん」の意味がありますので、元々「八幡神」は「たくさんの神(の依り代)」、特定個別の神ではなかったことが想定されるのです。

これが、聖武天皇など仏教信仰の盛んになった時代に、応神天皇への信仰心と習合し、きわめて仏教的な性格を持った神となりました。つまり、聖武天皇など奈良、平安時代の天皇が、仏と応神天皇の双方を信仰したことで、「八幡神は仏教の守護神」「つまり八幡大菩薩」というように、「菩薩的性格の神」ができあがったということですね。

元々仏教イベントであった放生会が、神事と混じり合った理由の1つは、日本で放生会が始まった切っ掛けがこの「八幡神の託宣」であったことに由来するでしょう。

八幡神(八幡大菩薩)との関係と放生会の衰退・変化

上記のようにして、神仏習合の祭りとなった放生会ですが、1868年の神仏分離令によって「神と仏を分ける」ことが求められます。さらに廃仏毀釈が介在したことにより、放生会は名称を変更せざるを得なくなったようです。

明治以前は、宇佐神宮でも石清水八幡宮でも「放生会」と呼んでいたものが、

  • 宇佐神宮→仲秋祭
  • 石清水八幡宮→石清水祭

と呼ぶように変化しました。なお福岡県の筥崎宮では依然、今に至るまで「放生会(ほうじょうや)」として開催されています。

放生会はいつ行われる?

放生会は収穫祭などの名目上、秋祭りとして9月、10月に開催する地域が多くなっています。これらのうち、9月15日に開催されているところは、旧暦の8月15日に開催されていた放生会の流れを汲んでいる神社仏閣です。

一方、中には、4月に行われるところもあります。

  • 興福寺(京都)→4月17日……石清水八幡宮の「秋の例大祭(石清水祭)に対して、興福寺では春に放生会が行われます。神仏分離に伴い、春と秋とに祭を分けたと言われています。
  • 石清水八幡宮(京都)→9月15日
  • 筥崎宮(福岡)→例年、9月12日から18日
  • 宇佐神宮(大分)→体育の日を最終日とする3日間(土曜日から月曜日)が基準の開催日となる
  • 放生寺(東京)→体育の日
  • 鶴岡八幡宮(神奈川)→9月例大祭




各地で行われている放生会

各地の放生会で、有名なものは下の2つです。

  • 京都・石清水八幡宮
  • 福岡・筥崎宮

それぞれについてご紹介します。

京都「石清水八幡宮」の放生会

京都の放生会は、石清水八幡宮で開催されています。

例年では9月15日に石清水祭の中で放生会が行われています。

元々は平安時代初め、宇佐神宮から八幡神を勧請したのとほぼ同時期に放生会も伝わったものですが、明治時代の神仏分離の影響で伝統がほとんど失われてしまいました。

神仏分離の後、1884年からは「石清水祭」として執り行われ、「放生会」の名称は、後の平成16年に石清水八幡宮放生大会として復活しています。

神仏分離を経ても日本三大勅祭の1つとしては存続し、かつての放生会を彷彿させるお祭りとして有名になりました。

※日本三大勅祭……賀茂祭(葵祭)・春日祭・石清水八幡宮放生大会

平安時代そのままのような古風な儀式が特徴的

石清水八幡宮では、863年、旧暦8月15日、「石清水放生会」として、鳥や魚を放ち「生きとし生けるものの幸福」を願って開始されたお祭りが、紆余曲折を経て現在に伝わります。

一時は完全に行われなくなったこともありますが、現在では9月15日のAM2時から神輿に神霊を移して、まだ暗いうちに松明と提灯の明かりだけを灯して、ご本殿から頓宮へと渡御。この「神幸行列」は、およそ500人の神人を供に連れた、錚々たる神の儀式です。

次にご紹介する、福岡の放生会とはまた全く違った魅力があるのが、京都の放生会です。

ちなみにこの行列には、5,000円の奉賛をもって参列することも可能とか。詳細は石清水八幡宮の公式サイトなどでご確認くださいね。

福岡「筥崎宮」の放生会(ほうじょうや)

福岡の放生会は毎年、9月12日から9月18日までの間、開催されています。

「万物の生命に慈しみ、殺生を戒め、秋の実りに感謝する」ことを旨とするお祭りです。

「山笠」と「どんたく」と肩を並べ、この3つで福岡の3大祭りとして出店や見せ物小屋が出るほどの、観光のお祭りになりました。

放生会ではちゃんぽんとおはじきが名物!!

福岡の放生会では食べ物の出店や見せ物小屋が有名ですが……。

食べ物ではないちゃんぽんとおはじきがお土産の名物として出店されています。

ちゃんぽん=ビードロは存続の危機!?

ちゃんぽんは、長崎のほうではビードロともいわれるガラスで出来た玩具です。(注・麺類ではありません!)

筥崎宮で公式に販売されるちゃんぽんは、巫女さんが一つずつ色付けをしてくれる、のですが……

実は、2020年に最後のちゃんぽん職人が亡くなってしまい、筥崎宮でのちゃんぽん販売はしばらく見合わせとなることが決定しています。(2020年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、放生会自体が中止となっており、ちゃんぽんの復活は全くの未定となってしまいました!)

もっとも、ちゃんぽん自体は放生会の屋台でも販売されているものがあり、見た目を楽しむだけならこれらを購入することは引き続き可能かと思います。

しかしこれらはあくまでも、見た目と価格だけを追究したちゃんぽんなので、購入しても音を鳴らすことは期待できないのだそう……。

公式の、職人さんが作成したちゃんぽんは、ストローのようになっている部分から息を吹くことで「ちゃん、ぽん!」と音が鳴ることから、ちゃんぽんと呼ばれているもの。いつかまた公式品が復活するといいですね。

おはじき=素焼きの芸術品!

おはじきは博多人形の技術を用いた芸術品の一つとして売り出されていて、粘土を固めて素焼きで作られます。

額縁や箱に入っていて、大変割れやすいもの。

放生会では購入の列ができる程の人気商品でしたが、2017年頃にあまりの売れ行きで購入希望者が殺到、トラブルになったことがあり、放生会での販売は一旦中止となりました。

その後、筥崎宮の公式サイトでセット販売のみ通販ができるようになっています。価格は

  • 額装→13,000円
  • 桐箱入り→3000円

と、なかなか攻めた金額。とはいえ公式品で芸術品ですから、これくらいは当たり前、依然として売り切れ必至の人気商品です。

是非この機会に購入してみては?

お化け屋敷も見どころ!

見せ物小屋が出ている福岡の放生会ではお化け屋敷も有名です。

筆者はホラー系が苦手なので入る勇気はございませんが、未だにこんなのあるの!? とでも言いたくなるような、なんとも言えず昭和アングラ……ああいえいえ……まあそんな雰囲気が魅力的と言えば魅力的!?

かなり怖いと有名なので心臓と精神の強い方、是非行ってみてください!!

ちゃんぽんとおはじきは通販できるの?!

ちゃんぽんは割れやすいこともあり、公式通販などはありません。

一方、おはじきについては上でご紹介したとおり、筥崎宮の公式サイトにて、セット販売が行われています。

Yahoo!オークションやメルカリなどで転売されることもあるようですが……神様のもので下手に利益を上げようなどとすれば罰が当たること請け合い。

ちゃんとしたものを買いたい方は、しっかりとした購入元から、直接購入してくださいね。

放生会のでの縁起物

放生会での縁起物は、さきほどもご紹介した、ちゃんぽんとおはじきが有名なのですが…。

葉つきの新生姜も、縁起物として売られているようです。

まだ9月は残暑の季節。

新生姜を食べて、残暑を乗り切ろうとする心意気ですね。

福岡民の方を尊敬します。

新型コロナウイルスにおける放生会の現状

昨今、我々にとって悩みの種でもある新型コロナウイルス。

各観光地方でも打撃を受けていますが…。

放生会でも例外ではありません。

2020年は、多くの放生会のイベントは中止になりました。出店が出ず、殿内で行われる神事のみ小規模で行われたところが多かったようです。

2021年、福岡では緊急事態宣言が出され、まだ開催するかどうかも未定です。

公式からの発表を待ちましょう。

放生会を楽しんで、心から笑おう!!

京都と福岡で有名な放生会…。デートにもおすすめの、魅力的なイベントです!!

関東民の筆者にとっては未知の世界でもありました。新型コロナウイルスが落ち着いたらどちらのお祭りでも参加してみたいもの。

日常であれば「人の嵐」と表現する方もおられるほどのイベントです。しっかり復活してもらって楽しみたいところ。また、秋祭りの奥底にある元々の「生命への慈悲」という部分も忘れずにいたいですね。

Writer:夜野大夢(ホームページ

Writer:陰陽の末裔/占い師・パワーストーンアドバイザー
あん茉莉安(ホームページ

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