黄泉の国とは…どこにあるの?食べ物がある?「振り返るな」って本当なの!?地獄との違いも

スポンサードリンク

黄泉の国…聞いたことはあるけど地獄のことかな、行ってみたいけどどこにあるのかな? とか思っていませんか?

今日は黄泉の国の食べ物から伝説、黄泉の国がモチーフとなったアニメ、禁断の「黄泉の国への行き方」など、様々な視点から黄泉の国を解説していきます。

黄泉の国とは?

黄泉の国とは…古来、仏教が日本に入る以前に信じられていた死後の世界の事をいいます。

黄泉の国は『古事記』などにおいては「よもつくに」と呼称されており、現世と繋がった所にある死者の住むとされる地下の国となっています。

また根の国(スサノオが治める国)、他界、罪や穢れが集まる場所ともされています。

日本神話における神の世界には、3つの世界があります。

・高天原(天上界にあり、神々が住まう世界)

・常世の国(人間の霊が住まう世界)

・黄泉の国 (地下にある「根の国」「底の国」を含めた冥界の事)

がその3つです。

これとは別に、仏教の概念が入ってきたことにより、「地獄」の概念が出来ました。

悪人達が死んだ後に送られる世界のことを指します。

ここで生きた時に行った罪や咎の償いをします。

黄泉の国の別名まとめ

黄泉の国の別名がいくつか出てきたので、まとめてみましょう。

  • ヨモツクニ
  • 根の堅洲國(ねのかたすくに・『古事記』の表記)
  • 妣國(ははのくに・『古事記』より、須佐之男命にとって母親のいる国、母の国という意味)
  • 根の国(『日本書紀』の表記)
  • 底根國(そこつねのくに・『日本書紀』の表記)
  • 底の国(祝詞などで使われる言葉)
  • 根の国底の国(=根國底國・ねのくにそこのくに・祝詞などで使われる言葉)
  • 底根の国(そこねのくに・祝詞などで使われる言葉)

……こんなにあるとは、という感じでしょうか。

特に前半は、記紀神話に見られる古い言葉ですが、後半は現在でも祝詞で神主さんが口に出す言葉ですので、知っておくとイザという時に「あっ、これは黄泉の国のことだ」と思い当たることになるかもしれませんね。

黄泉の国と仏教の地獄との違い

黄泉の国と似たものに、仏教における「地獄」があります。

しかし、地獄単体では黄泉の国の役割を果たさないと言えるでしょう。

日本神話における「黄泉の国」とは、死者の国であり、そこは生前の善悪が介在しない平等な行き先です。

しかし仏教の場合には、死後の世界が大まかに「極楽と地獄」とに分けられています。

仏教の地獄は三途の川を渡り、悪人は地獄へ送られ閻魔様からの懲罰を受けた後、輪廻転生を繰り返します。例えば下のような石積みですが、親よりも先に死んでしまった子どもの霊が、先立つ不孝を償うために賽の河原で石を積むと言います。これは「地獄」のワンシーンとして有名ですね。しかしこれも、黄泉の国の姿ではありません。

一方、仏教的な考えによれば、善人は地獄へは行かず、極楽へと行き、善人なりのプロセスを経て輪廻転生の輪に戻されるというわけです。

地獄と訳される死後の世界は仏教、キリスト教、イスラム教など各宗教に存在します。

日本でイメージされる地獄は仏教の概念のもので、地獄にも、いくつもの種類があります。ただ日本神話の世界では、天国や極楽にあたるものがないので、黄泉の国は罪人の世界というわけではなく、総じてあの世のことであると考えて良いのです。

「黄泉の国」の意味、語義……「よみ」とは?

「黄泉の国」には「地下の泉の国」という意味があります。

場所は地下にあたるわけですが、これには古代の埋葬方法が関連していると言われます。

古代では、人は亡くなると地面に穴を掘り、穴の中に埋葬されたものです。

あるいは地位のある人も、古墳を作り、横穴を通って地下へと埋葬されました。

したがって、この風習が神話化した時に、地下の国、黄泉の国という連想が行われたものと考えられているのです。

ちなみに「黄」の文字は五行の「土」を表し、「泉」とはすなわち「水」ですから、陰陽の陰であることを示します。

「水」とは五行において死の象徴でもあることから、もろもろの文化的な概念が集まり『黄泉』ができあがったものと推測されます。

なお「よみ」は「やみ」とも通じる言葉です。

黄泉の国=「よもつくに」とされるのはなぜ?

黄泉の国は、「よもつくに」とも呼ばれています。

「つ」とは「~の」とか「~にある」ということを意味する古語です。

つまり「よもつくに」とは「黄泉にある国」という意味と解釈してOK!「よみつくに」は発音がしづらいため、時間を経るごとに「よもつくに」と発音しやすく変化した可能性が高いでしょう。

黄泉の国の食べ物、黄泉戸喫(よもつへぐい)について

黄泉の国にも食べ物は存在していると言います。

ただ、私達が想像している食べ物とは恐らく違うものなのでしょう。

この、黄泉の国の食べ物を食べることを、「黄泉戸喫」と書いて「よもつへぐい」と言います。

この食べ物は死者の世界の穢れた食べ物とされていて、例え生きたまま食べても、そのまま黄泉の国の住人になってしまう……という意味合いが込められています。

この話で有名な神話が伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)の神話です。

イザナミとイザナギは夫婦で、日本の島、八百万の神を産みだし、最後に、カグツチという神を産む。しかしカグツチは火の神だった為にイザナミは火傷して死んでしまいます。

夫イザナギは、妻のイザナミが忘れられず、黄泉の国(あの世・死者の国)に迎えに行って連れ戻そうとする。しかしイザナミから「すでに黄泉の国の食べ物を口にしていたために一緒には行けない」と断られてしまうという悲しい神話です。(※ちなみに、この後、無理矢理連れて行こうとしたためにイザナギは大変な目に遭うのですがその件はまた後で。)

黄泉の国ではどんなものを食べると思う?古墳に見る「黄泉の国の食べ物」イメージ

古墳から出土するものと言えば、もっぱらハニワとか土偶、といったものが知られていますが、実は「食べ物」に関連するものも出土しています。

例えば、小型のかまど。現在、料亭や旅館などで仲居さんが火をつけてくれる、個人用の小鍋のようなものが、古墳時代に既に古墳から出土しています。

あの世に行っても、これで煮炊きしてね!! ということですね。

では、鍋の中身はどうするのか?

これについては、素焼きの入れ物に入ったサザエさんなどが出土しています。つまり、黄泉の国の人々は、貝類を調理して、よもつバーベキューをしている!

……というのが古代人のイメージだったようです。

なんか、案外おいしそうですが、黄泉の国で食べると現世にはもう戻って来られなくなるというところだけ、注意が必要ですね。

黄泉の国で振り返っちゃダメなのは何故?!

「黄泉の国で振り返ってはいけない!」という話を、聞いたことがあるかもしれませんね。

なぜ黄泉の国で振り返っちゃダメなのか…。

諸説ありますが、この話の根拠として一番有名なのは先ほど登場した、伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)です。

イザナギは、黄泉の国へ出向き、一緒に連れて帰ろうと思ったのですが、妻である伊邪那美命(イザナミノミコト)は朽ち果てた姿へ変わり果ててしまっていたため、夫に「部屋に入らずすぐに帰ってくれ」と言います。(冷たい。)

ところが伊邪那岐命(イザナギノミコト)は無理矢理ドアを開けて部屋の中を見てしまい、妻のひどい姿を見て、驚きのあまり、逃げ出してしまいます。(ひどい)

彼女は見られた事に腹を立ててしまい、ヨモツシコメ(黄泉醜女)という部下に夫を追いかけさせます。伊邪那岐命(イザナギノミコト)は命からがら現世に戻ってきますが…。

そこで振り返ったらイザナギは現世には戻ってこられなかったでしょう。妻も腐ってたことですし、仕方ないのでイザナギは諦め、妻とは永遠の別れを告げます。

神話からも伝わるように鶴の恩返しや浦島太郎の御伽話でも言いつけを破って痛い目にあってしまう、という話が多く残されています。

詰まるところ、振り返ったり言いつけや約束を守ると自分の身に還ってきますよという事ですね。

「振り返る」の意味が案外深かった件

ちなみに、この「死者の国を振り返る」という行為は、「過去の振り返り」につながっています。

今よりも格段に安全性と娯楽が少なかった古代、大切な人を永遠に失う悲しみは非常に大きなものだったに違いありません。

しかし、後ろを振り返るということは、スピリチュアル的な意味合いでは過去の振り返りであり、死者の国を振り返ることは、いつまでも死者に囚われることを指し示しています。

古代の思想において、これは、死に囚われること、すなわち自分自身の寿命を削って、死者の世界、黄泉の国に精神から囚われることに他ならないのです。

「大切な人を失ったからといって、過去を振り返ってはいけない」

なぜなら、黄泉の国に囚われて、出てこられなくなってしまうから。

黄泉の国を振り返ってはいけない、という言い伝えには、暗にこのような意味が含まれているんです……。

大切な人を失うこと。どうしても避けられないこと。

イザナギがイザナミに逢いに、黄泉の国へと一度下ったことは、愛する人への永遠に消えることのない恋慕の情の表れです。

しかしイザナミは夫を思い、一人で戻れ、振り返るなと諭す。亡くなった側もまた、愛する人が早々に死への道を辿ることを望んではいません。

そうやって、振り返らずに、イザナギは失意のうちに無理矢理にでも前を向くのですね。

振り返っちゃダメなのは日本だけではなかった!オルフェウスと黄泉の国

死者の国を訪れた者が「帰り道で後ろを振り返ってはいけない」というエピソードは、ギリシャ神話にも残されています。

星座「こと座」のモチーフとなった竪琴の持ち主、オルフェウスは、めっちゃイケボの持ち主で、竪琴の名手だったと言います。

オルフェウスの妻であったエウリュディケ(難しい名前すぎる)も、オルフェウスがベタ惚れするほどの美貌、美声の持ち主だったのですが、イザナミよろしく先立って黄泉の国へ行ってしまいます。

オルフェウスは死者の国を訪れ、妻を連れて帰れるよう、冥界の王であったハデスとその妻ペルセフォネを竪琴で黙らせ説得します。2神は音色と歌声の美しさに、「妻を連れて帰っても良いが、地上に出るまで後ろを振り返ってはならない」とオルフェウスに伝えるのです。

ちなみにその後、地上への長い道のりを妻の手を引きながらオルフェウスは歩きますが、あと少しで地上! というところでエウリュディケが美声でオルフェウスを「あなた、あなた♥」と呼んだせいで、後ろを振り返ってしまい、彼女は二度と冥界から出られなくなり、オルフェウスは一人で地上に戻る羽目に……。(妻ひどい……と思いきや、これは本当に妻が呼んだのではなく、地獄の悪魔が妻の声で呼んだのだそうです)

その後、泣き暮らしたオルフェウスは音楽家としててんで使い物にならなくなったそうな。アーメン。

ちなみにこちらのお話は、振り返ってしまったために生きる気力を失ったことを暗示しているわけですから、やはり「振り返ってはいけない」が意味するところは日本神話と変わらないようですね。




黄泉の国にいる神様は誰?

話を日本神話に戻しましょう。黄泉の国にいる神様は誰でしょうか?

まず、黄泉の国の女王として挙げられるのが、伊邪那美命(イザナミノミコト)

そして、イザナミが亡くなった後に、黄泉の国を訪れることになったのが、その息子である須佐之男命(スサノオノミコト)です。

スサノオは、母親であるイザナミが亡くなった後、とても悲しんで暴れ回り、「ママのところへ行きます!」といって家出をしてしまいます。

もろもろありますが結論として、奇稲田姫(クシナダヒメ)を妻としたスサノオは出雲国に根を下ろしてそこで生活をすることになります。この出雲国は、黄泉の国の入口ではないかと言われていますが、それについては後述しましょう。

最後に、大国主命(オオクニヌシノミコト)も黄泉の国に縁の深い出雲の神様です。

オオクニヌシは、スサノオのいる根の国(=黄泉の国)を訪れ、スサノオの娘であった須勢理毘売命(スセリヒメノミコト)と両想いになります。こちらも、もろもろあってスサノオにさんざん怒られながら、出雲に宮殿を建ててスセリヒメと住むことを許され、黄泉の国を出て出雲国で暮らしたと伝えられています。

黄泉の国を英語で言うと?

黄泉の国は、英語で「Realm of the dead」と表現するようです。

こちらは日本の黄泉の国だけではなく、海外の様々な「冥界」「冥府」をあらわす言葉となります。

「Realm」とは、国土、天地、という意味です。

黄泉の国への行き方!どこにあるのか?

それでは、お待ちかね! 黄泉の国への行き方をご説明しましょう。

黄泉の国ツアーへようこそ……?

黄泉の国への入口と噂のあの場所とは!?

黄泉の国に繋がるとされている入口は出雲にあるようです。出雲は神話の国として有名ですが、その島根県出雲市に黄泉比良坂があります。(上写真)

古事記によると現在の東出雲町に位置しており、ここが黄泉の国の入口ではないかと考えられるのです。

出雲にはもう一つ入口と目される場所があります。

出雲市猪目町にある「猪目洞窟(いのめどうくつ)」がその場所です。(下写真)

この猪目洞窟、『出雲国風土記』には「夢に出てくると、必ず死ぬ」……なんて書かれているんです……ちょっと怖すぎる……。

あっでも、あくまでも言い伝えですからね!

一度興味のある方は島根県の出雲に出かけてみては如何でしょうか?

ご紹介しきれないくらいに黄泉の国について様々な文献や場所が残っていますから是非!

黄泉の国と現世との間には「岩」がある

千引の岩(ちびきのいわ)、という岩があります。(写真上)

これは、さきほどイザナギとイザナミの神話を紹介した際に、地上へと逃げ帰ってきたイザナギが黄泉の国と現世との間に境界として置いた岩であると伝えられています。

千引の岩は、出雲の黄泉比良坂に現存しています。もちろん本物かどうかは謎です。

「岩」は、日本神話で重要な役割を何度か果たしてきました。

例えば、天照大神が「岩戸」に隠れて地上が真っ暗になった……という「天岩戸」の伝説。

この時も、天照大神は自分と世界との境界に岩を置き、無理矢理に岩戸を開けて天照大神を引きずり出した後は、他の神々が岩戸を元に戻して注連縄を張り、「もう天照大神が異界に身を隠さないように」と配慮をしたと伝えられています。

岩は、ある世界と、別の世界とを仕切るための、結界的アイテムとして使われているのです。

黄泉の国の物をモチーフにした作品のアイテム・キャラ

ここで、黄泉の国と、それに伴うあれこれをモチーフにした作品のアイテムやキャラクターをご紹介します!

黄泉の国を少し身近に感じていただける、かも?

よもつへぐいで変身!『仮面ライダー鎧武』

先程紹介した、黄泉戸喫…。

それをモチーフにした特撮のキャラがいます。

仮面ライダー龍玄・黄泉です。

このライダーは北欧神話のヘルヘイムが元で作られた作品、仮面ライダー鎧武に出てくるライダーの一種で、強大な力を発揮する代わりに変身者の体力を削って最終的には命を落とす危険なアイテム。ヨモツヘグリロックシードを使用することで変身できるライダーです。

仮面ライダー鎧武は実在する果物の果実、木の実や黄金の果実、黄泉戸喫などをモチーフにした作品なので出て来た時はびっくりしました。

この作品はなかなかの名作なので気になった方、是非一度見てくれたら嬉しいです!

よもつへぐいで(ブタに)変身!『千と千尋の神隠し』

よもつへぐいでブタに変身してしまった……という話が『千と千尋の神隠し』です。

作中、湯屋の支配人である湯婆婆は千尋に対して「この世界のものを食べてしまったから、お前の父母はブタになってしまった」ということを言っていますが、これも一種の「よもつへぐい」をモチーフにしているとのことでした。

江ノ電で黄泉の国行っちゃう?『DISTINY鎌倉ものがたり』

堺雅人と高畑充希がすてきな夫婦を演じたことで話題になった『DISTIHY鎌倉ものがたり』、こちらは江ノ電に乗って黄泉の国に行けてしまうという鎌倉ファンタジーです。

世界観、CG、ストーリー。全てがホンワカとして、黄泉の国好きにはたまらない構成なので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

詳しくはこちらの記事もご参照ください→映画『DESTINY鎌倉ものがたり』DVD観るなら押さえておきたい基本情報・興行収入・見どころ大公開!

黄泉の国を紐解いて…。

黄泉の国を様々な視点から紐解いてみました。

知らなかったことはありましたでしょうか?

仏教とは違った意味で死んだ後にならないと分からない世界ではありますが、いずれ自分の身で知る時が来ます。この記事を見て、出雲などに旅行に出かけてその雰囲気を味わうのも、また一つ黄泉の国を知るきっかけにもなるでしょう。

一種ファンタジーの世界でもありますが、黄泉の国の概念を楽しみながら、日本人の持つ古い考え方を自分の中に落とし込んでみてくださいね。

Writer:夜野大夢(ホームページ

Writer:陰陽の末裔/占い師・パワーストーンアドバイザー
あん茉莉安(ホームページ

スポンサードリンク -Sponsored Link-



当サイトの内容には一部、専門性のある掲載があり、これらは信頼できる情報源を複数参照し確かな情報を掲載しているつもりです。万が一、内容に誤りがございましたらお問い合わせにて承っております。また、閲覧者様に予告なく内容を変更することがありますのでご了承下さい。