夏も盛りになると、お盆の帰省をお考えになる方もいらっしゃるでしょう。
「うちは、新盆だから」とか「この地域は旧盆よ」などという言葉を耳にしたことはあるかもしれませんね。
では、新盆、旧盆とは何でしょうか? 一体何が違うのでしょうか?
今回は、大人になるとなかなか聞きづらい、お盆のこと、特に新盆と旧盆について、詳しくご紹介します。
帰省する際に役に立つ、時期や準備する物、服装やお香典の金額まで細かくご紹介するので、「新盆って何?」、「旧盆っていつ?」などの疑問が多い方、是非お役立てください!
目次
そもそも「お盆」って何?
お盆は、「季節の節目に行う先祖供養のうち、夏に行われるもの」のことです。
ここで、「お盆」について確認をしておきましょう。
古来より日本人は、季節の節目に先祖供養を行ってきました。
その代表的な行事が「お彼岸」と「お盆」で、このうち夏の時期に行われるものが「お盆」です。
昔、亡くなった人は、旧暦の7月15日に帰ってくるとされていたことから、15日前後に先祖の霊(精霊:しょうりょう)を家に迎えて供養をし、家族の無事を先祖に感謝するようになりました。
実は、お正月も先祖供養の1つとされていて、「盆と正月」という言葉があるように、いずれも重要な行事でした。
そのため、お正月休みやお盆休みがあり、多くの人が帰省するのです。
お盆はいつからいつまで?
お盆は、「7月か8月の、13日から16日まで」のことです。
お盆のは元々旧暦で行われており、旧暦7月の1日は釜蓋朔日(かまぶたついたち)と言われ、ご先祖様があの世から出ていくたに、地獄の釜の蓋が開けられる日とされています。
しかし後述しますが、現代では旧暦7月(現在の8月)ではなく、新暦7月(現在の7月)にもお盆が行われるようになりました。どちらの月でも、期日は13~16日です。違いについて詳しくは、下の解説をご覧くださいね。
大まかなお盆の流れ/13~16日の過ごし方
まず、旧暦7月の1日から、12日までの間にお墓お掃除などを進め、お盆の準備をします。
そして、準備を整えて迎えた13日から、お盆の期間がはじまり、お盆の終わりを迎えるのは、ご先祖様があの世に戻られる16日です。
地域によっては、15日までがお盆だというところもあるようです。
ちなみに、盆踊りはご先祖様をお見送りする儀式が由来となっているため、この頃に開催されることが多いのです。
新盆の読み方
新盆は、「しんぼん・あらぼん・にいぼん」と3つの読み方があります。
- しんぼん→7月に行うお盆。新暦7月のお盆、という意味です
- にいぼん、あらぼん→親族が亡くなってはじめてのお盆のことを指します。この場合は7月でも8月でも初めてのお盆ですから、時期を確認したい場合は「○○さんのにいぼんはしんぼん?それとも、旧盆でやるの?」という確認が必要となります。「初盆(はつぼん)」とも呼びます。
つまり通常、旧盆と対応するのは新盆(しんぼん)です。
漢字で「新盆」と書いたとしても、口頭で言う時に「にいぼん」や「あらぼん」と発音されていれば、それはどなたかが亡くなって初めて迎えるお盆、初盆、という意味ですので、混同しないようにしましょう。
新盆とは?
「7月に行うお盆」のこと。
お盆は、8月の中旬じゃないの?と疑問に思う方もいらっしゃると思いますが、全国的に見ると、お盆を7月に行う地域もあるんです。
7月に行うお盆を新盆、8月を旧盆と呼びます。
ちなみに、読み方の所でも少し触れましたが、新盆を「にいぼん」あるいは「あらぼん」と読む場合は、前年のお盆以降に、お亡くなりになった人がいる家が初めて迎えるお盆のことを指します。「初盆」とも言います。
初盆は、通常のお盆よりも盛大に行います。
新盆はいつ?
新盆は、「7月13日から7月16日」を指す。
新盆と旧盆では日付が違います。
新盆は、7月13日から7月16日を指します。
もともと旧暦の7月13日~16日(現在の8月中旬頃)に行われていたお盆ですが、明治の改暦によって、約1ヵ月季節が早まった、新暦の7月13日~16日に行うことになりました。
2020年の新盆はいつ?
2020年(令和2年)の新盆は、「7月13日(月曜日)から7月16日(木曜日)」です。
来年以降の新盆はいつになるの?
お盆の日付は毎年変わりません。
そのため、曜日が変わるだけとなります。
多くの会社は、旧盆は「お盆休み」といって1週間ほどの休みになりますが、新盆の場合わざわざお盆に合わせて休暇となる会社は少ないのではないでしょうか。
2021年(令和3年)の新盆は、「7月13日(火曜日)から7月16日(金曜日)」です。
2022年(令和4年)の新盆は、「7月13日(水曜日)から7月16日(土曜日)」です。
2023年(令和5年)の新盆は、「7月13日(木曜日)から7月16日(日曜日)」です。
旧盆の読み方
旧盆は、「きゅうぼん」と読みます。
旧盆とは?
「8月に行うお盆」のこと。
明治5年に公布された改暦によって、お盆は「新盆」である、7月13日からと決められました。
しかし、7月の中旬は、作物の成長度も早いことから農繁期になり、農作業に支障が出ることがありました。
そのため、農作業をすることの多い地方では主に、旧暦だったころお盆が行われていた8月13日からの「旧盆」を「月遅れのお盆」などと呼び、8月にお盆を行っているのです。
旧盆はいつ?
旧盆は、「8月13日から8月16日」を指す。
では、旧盆について詳しく見ていきましょう。
2020年の旧盆はいつ?
2020年(令和2年)の旧盆は、「8月13日(木曜日)から8月16日(日曜日)」です。
来年以降の旧盆はいつになるの?
旧盆の日付も毎年変わりません。
2021年(令和3年)の新盆は、「8月13日(金曜日)から8月16日(月曜日)」です。
2022年(令和4年)の新盆は、「8月13日(土曜日)から8月16日(火曜日)」です。
2023年(令和5年)の新盆は、「8月13日(日曜日)から8月16日(水曜日)」です。
このあたりの曜日によって、お盆休みの範囲を調整する会社は多いようです。
新盆と旧盆の違い
新盆と旧盆の差は、「日付の違いだけ」。
新盆と旧盆は、日付は違いますが、内容自体に差はありません。
新盆・旧盆だからといって、行事や風習の内容が異なるのではなく、お盆をする日程が、地域にとってどのような日程になるかが大きいと考えられます。
なぜ新盆と旧盆に分かれているのか?
お盆の時期が、新盆と旧盆に分かれている理由は、明治時代に改暦が行われたからです。
そもそも日本では、天保暦(てんぽうれき)と呼ばれる、太陽の動きをもとにして作られた太陰太陽暦が使われていました。
中国の流れをくむこの暦は、2~3年に一度のペースで訪れる閏月(うるうづき:13カ月目の月)を入れて、太陰暦のずれを太陽暦に合わせるという方式であり、日本の気候風土や農業中心の生活とは相性がよいものでした。
しかし、1872年12月9日(明治5年11月9日)に明治政府は改暦をすることを決めます。
改暦をする事になった理由は、定かではありませんが、財政難であった明治政府が、閏月の分の月(13ヶ月目の月)を削除することで官公吏の給料節約を図ったという説もあります。
いずれにしても、当時は日本が西洋化へ進み始めた時期です。
日本は、暦も西洋と同じグレゴリオ暦(太陽暦)と合わせることで、世界に並ぼうとしたのだとも考えられます。
このように、明治政府が改暦を公布した僅か1か月後、明治5年12月2日(1872年12月31日)に、天保暦から太陽暦への改暦が行われ、翌日の12月3日をもって明治6年(1873年)1月1日に改められたのです。
しかし、改暦が、いきなり社会全般に徹底されたわけではありませんでした。
官暦と呼ばれる、政府発行の暦でも、明治6年版には、改暦の混乱を避けるために旧暦が併記されています。
そして、その後も1910年(明治43年)まで、旧暦併記は続けられていました。
日本の改暦は、この明治5年以来行われていません。
よって、現在では、明治5年まで使用されていた天保暦を「旧暦」と呼び、西洋の流れを汲んだグレゴリオ暦を「新暦」と呼びます。
旧暦は新暦に比べて、約30日の遅れがあります。もともと旧暦の7月15日に行われていたお盆は、新暦の8月15日にあたるようになりました。明治政府が「お盆は新暦で!」と定めたため、公式には新暦7月15日がお盆となりました。
ところが今では、新盆は東京を中心とした一部の地域のみとされ、大多数の地域は旧盆でお盆を執り行います。
では、なぜ東京だけに新盆が根付いているのでしょうか?
その説は色々ありますが、他の地域では、7月は農業が盛んな農繁期のため、1ヶ月遅れた旧暦の日程のままお盆を行ったという説もあります。
つまり、農作業にあまり関係のない都市部から根付いていったと考えられます。
そして現在も、会社のお盆休みは旧暦8月ですので、東京をはじめ大都市部でも田舎から出てきた人であればお盆を8月に行うことが少なくありません。田舎に帰ってお盆をするのも、休みのある8月のほうが好都合です。一方で、昔からうちは7月だったんだ、というご家庭や、東京からIターンしたようなご家庭では、大都市部でなくても新盆を採用していることでしょう。
現在でも旧暦は、占いや伝統行事などで使われており、「旧暦」や「陰暦(いんれき)」と呼ばれ親しまれています。お盆もその1つと言うことができるでしょう。
お盆の時期は地域で異なる
お盆の行事は、全国各地で行われますが、地域によって時期は異なります。
もちろん、旧暦と新暦の違いはありますが、それらの日付ではない日程をお盆としている地域もあるのです。
例えば、沖縄や南西諸島などでは、旧暦7月15日を守っているため、お盆の日が毎年異なります。
つまり、2~3年に一度のペースで訪れる閏月(うるうづき:13カ月目の月)を入れているので、日付は毎年違った日にお盆が行われます。
また、京阪地方では、7日を七日盆(なぬかぼん)と言い、7日を盆祭の始まる日と考えているところが多く、京都では生花をこの日に床の間に飾るべきものであり、精霊が乗って帰ってくるようにと、藁で作った馬を庭に出すところもあるようです。
お盆をする時の常識・スケジュール
では、お盆は、具体的にどのようなことをする行事なのでしょうか?
また、どのようなスケジュールで行われていくのでしょうか?
確認をしてから帰省をするといいでしょう。
お盆には何をするの?
お盆の目的は、「先祖の供養」です。
通常、お墓にいる精霊も、お盆の期間には家に帰って来ます。
そのため、故人や先祖が迷わないように「迎え火」を焚いて家に迎え、「送り火」で送り出します。
また、食事、お茶、果物などのお供え物を毎日して、読経をします。
お盆のスケジュール
お盆のスケジュールを順を追って解説します。
12日 (お盆の準備)
- お墓の掃除
- ご先祖様をお迎えする特別な祭壇「精霊棚(しょうりょうだな)」を作り、精霊馬やお供え物を用意します。
13日(迎え盆・お盆の入り)
- 故人や先祖のお位牌を、お仏壇から盆棚に移します。
- 夕方に、家の門口や玄関で「迎え火」を焚くことで故人や先祖の霊をお迎えします。
- 「迎え火」と合わせて、精霊が帰ってくる目印になるように提灯に電気を付けます。
- お盆の期間中のお墓参りは、13日の午前中がよいとされています。家族でお墓参りをして、帰ってくるご先祖様の目印になるように、迎え火をお墓の前で焚くという地域もあります。
- 昔は、13日の夕方に家から提灯を持ってお墓に出かけ、お墓の前で、提灯の火を移して迎え火を焚き、提灯の明かりで一緒に家に帰るという流れが普通でした。現在では、お墓での迎え火を焚く風習は少なくなりましたが、「ご先祖様を迎えに行く」という意味で、13日のお墓参りは良いとされているのです。
14日・15日(お盆中日)
- お盆の期間中は、提灯の明かりは絶やさないようにします。
- お盆の期間中は、毎食ごとに精霊棚に家族と同じ食事とお茶をお供えし、読経して先祖の霊を慰めます。
- 菩提寺(ぼだいじ:先祖の墓がある寺)の住職が檀家を回ってお経をあげます。このことを棚経(たなぎょう)と呼びます。
- お経をあげて頂いた菩提寺の僧侶と、親族や故人と親しい人たちを招いて会食をします。
- 関東では、お盆の中日にお墓参りをする、「留守参り」という風習が残っています。
- ところによっては15日の夕刻に、本来16日に行っていた送り盆の儀式を行うご家庭もあります。
16日(送り盆・お盆の明け・精霊送り)
- 屋外が暗くなったら、家の門口や玄関で「送り火」を焚きます。
- 「来年もお会いしましょう」という気持ちを込めて送ります。
- 精霊は「送り火」をするまで、家にいるので、お供え物を下げるのは「送り火」をした後です。
- 「迎え火」と同じように、お墓の前で「送り火」を焚くところもあります。
- 精霊舟などを使って、海や川に流して、精霊を送り出していた地域では、精霊はその舟で帰るとされています。
- 家によっては、送り盆の儀式を15日の夕刻に行うご家庭もあります。
お盆で帰省をする時の常識・マナー
では、お盆の期間中に実家に帰ったり、知人の家にお招きされた場合には、どのようなマナーが必要なのでしょうか?
服装はどうすればいいの?
ここで気をつけなければいけないのが、帰ったり、お招きされる家のお盆が初盆(はつぼん)かどうかです。
初盆とは、亡くなった家族の方や知人の方の初めてのお盆なので、葬儀のような服装が必要になることもあります。
通常、初盆はいつものお盆よりも盛大に行うことが多いので、お招きいただく知人の家は初盆の可能性も高いものです。分からない場合には確認しましょう。
通常のお盆のときの服装
一般的には普段着でよいとされています。
地域によっての違いがあるので、念のため確認は必要ですが、それほどかしこまらなくてもいいのです。
とはいえ、供養の場ですので、派手な服装や部屋着は避けましょう。
基本的には、地味な色合いの控えめな服装を心がけます。
通常のお盆の時のおすすめの服装
慣習に従い、両親、親族の服装に倣うことが一番です。よく分からない場合は確認してみるか、下記を参照してください。
男性の服装
スーツがおすすめです。ビジネススーツの中でも、控えめな色のものを着用します。
Yシャツは、白い無地のものがおすすめで、ネクタイも無地か地味な柄が良いでしょう。
女性の服装
露出の少ない、地味な色合いの服が望ましいです。
例えば、白いブラウスにグレーのスカートやワンピースなどでも大丈夫です。
アクセサリーは付けないか、つけてもパールなど控えめなものがおすすめです。
子どもの服装
出来るだけ派手な色の服は避けて、控えめな色合いの服を着用させます。
初盆に招かれた時の服装
初盆とは、故人が亡くなってから初めて訪れるお盆のことです。
通常、普通のお盆よりも盛大に行われることが多いので、知人や遠い親戚にお招きされることもあるでしょう。
初盆に招かれたら、まず、案内状を確認します。
「平服で」と記されている場合は、喪服に準じた略喪服を着用しましょう。
故人との関係が、友人や知人などであれば、略喪服でよいですが、故人との関係が、ご親戚などの血縁にあたる場合には、喪服を着るのが望ましいです。
一方で、初盆を「亡くなってから初めて精霊が帰宅してくるお祝い」と捉え、喪服や略喪服を全く必要としない家もあります。
いずれの場合も、一緒に行かれる知人や親せきの方に事前に確認することをお勧めします。
初盆に招かれた時のおすすめの服装
地域や親族の慣習に従い、両親や目上の人に確認を取るのが望ましいですが、適切な服装が分からない時は下記を参照しましょう。
男性の服装
一般的には、黒い喪服を着ます。
平服や略喪服と言われた場合には、黒や濃いグレーなどのスーツがよいでしょう。
Yシャツは、白の長そでで、ボタンダウンなどは避けます。
ネクタイは黒か、濃い色合いの無地を着用するようにしましょう。
女性の服装
女性も黒喪服を着ます。
夏用のワンピースや上下セットのアンサンブルなどの服装で、上着がセットになっているものが好ましく、肌の露出は極力控えましょう。
平服(略喪服)の場合では、地味で控えめな服装を心がけましょう。
例えば、無地のワンピース、黒や濃く暗い色のスカートとブラウスの組み合わせのような服装です。
ブラウスも、フリルやリボンのない無地のものがいいでしょう。
子どもの服装
子どもは、制服がある場合は、制服で出席させるのが好ましいです。
制服がない場合は、無地のズボンやワンピースなど地味な服装をさせましょう。
お香典はいるの?
故人の霊前にお供えする、お金や品物のことを「香典(こうでん)」や「香資(こうし)」と呼びます。
お盆に帰省されるときや初盆にお招きいただいた場合には、お香典を包みましょう。
本来は、お香典は、御仏前、つまり、仏さまに捧げる気持なので、明確な金額は決まっていません。
とはいえ、世間的な相場は存在しますので、知っておきましょう。
お香典の相場は?
お香典の相場も、初盆か通常のお盆かによって違ってきます。
金額の相場を見てみましょう。
初盆の場合
初盆には、香典として現金をお包みします。
金額は、故人との関係性や渡す側の年齢によっても変わります。
- ご友人やご近所の方にお渡しする場合→5,000円~1万円
- 故人が親戚の場合→1万円
- 故人が兄弟の場合→5万円
- 故人が実親の場合→5~10万円ほど
通常のお盆の場合
通常のお盆では、日ごろの感謝の気持ちを伝える意味でお渡しします。
そのため、高額ですと、逆に招く側が恐縮してしまうので、低額で大丈夫です。
しかし、お盆の風習は地域や家ごとに慣習が違うことが多いので、その場合は地域や家の慣習を優先しましょう。
- 一般的な目安は3,000円~5,000円
お香典袋の選び方・書き方・用意の仕方・出し方
香典袋は、「不祝儀(ぶしゅうぎ)」ののし袋を使います。
不祝儀袋とは、通夜や葬儀葬式や法事などの、お悔やみや弔事の際に現金を包むための、水引きがついた袋です。
この不祝儀袋は、使う水引きの本数や色が決められています。
水引の色
不祝儀袋の水引の色は、白と黒(黒白)、白と銀、銀と銀(双銀:そうぎん)、白と白があります。
※一部関西の地域のみ、白と黄があります。
水引の本数
不祝儀袋の水引の本数は、2本、4本、6本などの偶数です。
水引の結び方
不祝儀袋の水引の結び方は、あわじ結び、あわび結び、結びきりのいずれかです。
濃い色が右側になるようにします。
お札の用意の仕方・入れ方
使用する紙幣は、4枚や9枚といった「死、苦」を連想させる枚数にはしないようにします。
また、新札を使うと「前もって死を予期して用意していた」という意味になってしまうので、すでに使用して折り目のついたお札を包みます。
お札の表と裏は、お札の顔が見えている面を下向きにして中包みに入れましょう。
表書きの書き方
香典は、宗教によって表書きが異なるのでご注意下さい。
ちなみに、 蓮の花や葉が印刷されている不祝儀袋は、仏教にしか使えない袋です。
なお、香典袋に表書きをするときは、薄墨ではなく、普通の濃い墨を使用します。
この理由は、急なご不幸であったお通夜と告別式に比べ、お盆の日程は決まっていることから、事前に用意ができたということを表しています。
- 仏式
仏式のお盆の不祝儀袋には、「御仏前」「御佛前」「御供物料」などのような表書きをします。
最も一般的なのが「御仏前」です。
「御佛前」は、「御仏前」の旧字体です。
香典袋は無地か、または蓮の絵が付いたものを使います。
- 神式
神式の場合も、故人や先祖の御霊をお祀りする、「祖霊舎(それいしゃ)」、「御霊舎(みたまや)」、「神徒壇(しんとだん)」、「祭壇宮(さいだんみや)」をご供養をします。
祖霊舎とは、神式でのお仏壇のことを指します。
神式の場合の不祝儀袋は、「御神前」、「御玉串料」、「御榊料」といった表書きをしましょう。
香典袋は無地のものを使用して下さい。
香典袋の出し方
通常は、袱紗(ふくさ)に包んで持参します。
袱紗がない場合は、白または黒、もしくはグレーなどのハンカチで代用します。
不祝儀袋は、相手側に向けて出しましょう。
お招きいただいたけど欠席する場合
お招きいただいた、初盆や通常のお盆を、やむを得ず欠席しなければならないときは、出欠の返事と共に、お詫びの手紙と生花や御供物、もしくは、現金を包んだ御供物料(おくもつりょう)を送ります。
御供物料は、現金書留で当日までに届くように送りましょう。
その際は、現金を不祝儀袋に入れ、上段を御供物料、下段に名前を書きます。
現金書留の封筒には、お詫びとお悔やみの手紙を入れて、郵便局の窓口などから送ります。
お香典以外に持参するもの
先祖や個人にお供えする裳には、故人が生前好きだったものを用意するのが一般的です。
基本的には、お盆の期間中にお供えをしておけるような、日持ちのするものが好まれます。
例えば、お菓子、季節のフルーツ、お線香、ろうそく、お花、お酒などが一般的です。
「熨斗(のし)」は、慶事用につけるものなので、お盆のお供え物には、「掛紙(かけがみ)」を使います。
掛紙は、簡略化した「短冊」でも大丈夫です。
なお、紙袋に入れて持って行かれると思いますが、渡す際は必ず紙袋から出して渡しましょう。
紙袋は、すぐにたたんで持ち帰ります。
風呂敷に包んでいた場合も同様に、風呂敷から出してお渡しします。
全国各地に残るお盆の風習
お盆は全国的に行われる日本の風習ですが、通常のお盆とは少し違ったお盆の行事がある地方や、時代とともにお盆の行い方が変容していった地方もあります。
その一部をご紹介します。
長崎県長崎市の精霊船
長崎県の長崎市や隣県の佐賀県佐賀市、熊本県熊本市、御船町などでは、「精霊流し(しょうろうながし)」の風習が根付いています。
精霊流しは、初盆を迎える故人の家族が、盆提灯や造花などを使って飾った、「精霊船(しょうろうぶね)」を曳いて「流し場」と呼ばれる終着点まで運びます。
精霊船は、故人の霊を乗せていると言われています。
この盆行事は、毎年8月15日の夕刻から開催されます。
行事中は、手持ち花火や爆竹が鳴らされ、すさまじい爆竹の破裂音や鉦の音、掛け声が飛び交う喧騒の中で行われるのが特徴です。
精霊船には山車(だし)のような派手な装飾がされていて、お祭りだとと誤解されることもあるようですが、あくまでも故人の供養を目的とした仏教の行事です。
このような、精霊船は、初盆限定の習わしです。
通常のお盆の場合は、精霊船は作らず、藁を束ねた小さな舟の様な物に花や果物などのお供物を包んで、流し場に持っていきます。
以前までの、精霊船やお供物は、海へ流されていましたが、長崎市では1871年(明治4年)に環境に配慮し、禁止されました。
そのため、現在の精霊船は水に浮かぶような構造にはなっていなません。
長崎の一部の地域では、今でも川面や海上に浮かべています。
岩手県盛岡市の「舟っこ流し」
岩手県で行われる「舟っこ流し(ふねっこながし)」という盆行事は、町内会単位や、寺院で行われます。
故人の戒名や、先祖代々の霊と書いた札や遺影などを舟に張り、提灯や紙花などで舟全体を飾り故人を供養します。
船首には、龍頭を模したものがついていて、2~3mと大変大きなものです。
この舟を「舟ッコ(ふねっこ)」と呼びます。
舟ッコは、迎え盆の日から送り盆の朝まで、町内会のある場所や寺院などに展示します。
その後、舟ッコは、送り盆の日の夕方から夜にかけて、北上川の上流付近に並べられます。
並べられた舟ッコは、読経などの一連の儀式を終えた後に、褌(ふんどし)姿の男たちによって川へ運ばれます。
そして、花火や爆竹などが仕掛けられた舟は、火をつけて流されます。
以前は舟ッコも、そのまま流されていましたが、現在では環境保護のため、全て燃えるのを待ってから、下流で引き上げられます。
青森県の「法界折(ほかいおり)」
青森県の一部地域では「法界折(ほかいおり)」と呼ばれる先祖供養のためのお弁当のような折詰を墓前に供えます。
肉や魚を使わない、精進料理が詰められた折詰で、黒豆ご飯や山菜を材料にした煮物、季節の果物が詰めてあります。
「法界折(ほかいおり)」は、かつて、お供えした後に墓前で家族が頂くものでした。
沖縄県の「ウンケー」と「ウークイ」
沖縄県では、旧暦でお盆が行われます。
旧盆と言っても、正確な太陽暦で行うため、毎年日付は変わります。
初日である1日目をお迎えという意味の「ウンケー」、中日の2日目をナカヌヒ、最終日の3日目日をお送りという意味の「ウークイ」と呼びます。
この期間には、先祖の霊を手厚くもてなします。
沖縄のお盆は、「ウンケー」が初日とされていますが、その前の旧暦7月7日に「七夕(タナバタ)」と呼ばれる行事を行います。
笹の葉に願い事を飾る通常の七夕行事と違い、沖縄の七夕は、お盆が近づいてきたことを、ご先祖様に知らせるために行う行事です。
そのため、全国的なお盆で見られる、提灯を持ってお墓まで出迎える風習はありません。
沖縄のお盆は、お供えする物や食べ物にも特徴があります。
ウージと呼ばれるサトウキビを短く7本に切って束ねたものと、長いものを準備します。
サトウキビは、ご先祖様が家まで歩く際に使う「杖」の意味があるそうです。
また、初日の御膳料理には、「ウンケージューシー」を作ります。
「ウンケージューシー」 とは、ウンケー(初日)の日に、食べる 、ジューシー( 炊き込みご飯)のことです。 や 「混ぜご飯」 「かやくご飯」 のことをいいます。
他にも、沖縄では、独自のお盆風習が現在でも受け継がれています。
地蔵盆って知ってる?
お地蔵様の縁日があるのをご存知ですか?
縁日には、神仏が目の前に現れ、この世の人々と縁を結ぶ日と言われています。
通常の地蔵菩薩の縁日は、毎月24日とされていますが、お盆の月の24日は「地蔵盆(じぞうぼん)」として、盛大に行われます。
特に、関西地方では盛んな行事で、京都では、縁日前日である23日にから準備が始まります。
町内の人たちは、お地蔵さんを祠から出し、顔におしろいを塗って、目や鼻にくまどりを施すなど「お化粧」を行い、新しい前掛けを新調します。
新たに彩色する「お化粧」を行い、新しい前掛けを着せる。町中の石地蔵の顔に白いおしろいを塗って、目や鼻にくまどりを施します。
お地蔵さんが祀られていない町内では、寺院から借りたり、仏画を使用したりします。
お地蔵さんの前には、祭壇を作って、花や供物、地蔵幡(じぞうばた)と呼ばれる5色の幡などを飾り付けます。
また、火を灯した提灯に似せたホオズキや紅白の餅、落雁(らくがん)、白雪糕(はくせんこう)と呼ばれる、うるち米ともち米の粉に砂糖やハスの実の粉をまぜて作った干菓子、果物、そして、精進料理のお膳などが供えられます。
地蔵盆は、浴衣姿の子供たちが念仏を唱えたり、余興を楽しんだりと、夏の風物詩として親しまれています。
そもそも、お地蔵さんは、現世とあの世の境目に居ることから、地獄に行く者を救ったり、子供を守護しhたりすると信仰されてきました。
そのような、あの世とこの世を繋ぐ存在と、あの世から先祖の霊が帰ってくるお盆が結びついたのが、「地蔵盆」だと考えられます。
ちなみに、「地蔵盆」の代表的な行事として、京都の化野念仏寺(あだしのねんぶつじ)では、8月23日と24日に無数の無縁仏を供養する「千灯供養(せんとうくよう)」が行われます。
盆道って何?
盆道とは、お盆にご先祖さまが帰ってくるとされる、お墓から家までの道や、墓場付近などの草を刈り、掃除をし、修繕したりして、道を整えることを言います。
また、旧暦の7月1日に行なうことから、朔日道(ついたちみち)とも呼ばれています。
他にも、「盆道つくり」や「盆の道刈り」とも呼ばれる盆の準備の1つです。
ご先祖さまの霊が、歩きやすいようにという心を込めて道を作ります。
現在では、道路の舗装整備が進んでいるため、人が手を加えなければいけない道は少なくなりました。
ですが、まだ末舗装の部分は多少なりとも残っていますし、道路わきの草刈りや墓周りの掃除は欠かせません。
この盆道つくりの伝承は、全国各地に残っていて、「道なぎ」や「墓なぎ」などとも呼ばれています。
新盆も旧盆もご先祖を想って供養しましょう
お盆を行う日程には、新盆と旧盆があり、行う内容は変わらないことが分かりました。
また、全国的に行われている行事ですが、地域ごとに行われる独特の風習もあるようです。
クリスマスやハロウィンなど、西洋の文化を取り入れた行事も増えていますが、お盆はご先祖様を想い供養する大切な行事の1つです。
夏の時期のお盆の帰省は、ただの里帰りではなく、ご先祖様を供養するという目的も大切にしながら過ごしたいものです。
Writing:YUKIKO-加藤