正月元旦を迎えると家族が食卓を囲んで一堂に会し、「あけましておめでとうございます」の年始の挨拶とともにお屠蘇(おとそ)を飲んだり、おせち料理を食べます。
そして日本酒を浴びるようにラッパ飲みし、ビールもド頭からカブるように浴びるほど飲みます。あだ名はドラム缶
これぞ正月!いよっ!正月!待ってました正月!いよっ!日本一!イェイ!ホぅ!
・・。
・・・。
・・はい。そして、おせち料理を散々バクついた後、野球で例えるところの中繋ぎ(リリーフ)で登場するのが「お雑煮」です。
そこで質問!『あなたはなぜお正月にお雑煮を食べるのかご存知?』
以下では正月にお雑煮を食べる理由や日本全国の各地域でもお雑煮を食べる風習があるのか?、もしくは、お雑煮のレシピもやっぱり異なるのか?などお雑煮の謎について解明していきたいと思います。
そもそも「雑煮」って何?
お雑煮とは正月三が日に食べる正月特有の食べ物の1つであり、丸餅や角餅と野菜などの種々の食材と共に鍋へブチ込んで煮込みあげた「祝い汁」になります。
お雑煮を食べる風習が始まったのはいつ頃?『お雑煮の起源』
雑煮の起源は不明!
このような「雑煮」という言葉が有史上、初出となるのが1399年(応永6年/室町時代)の編纂された京都吉田神社の神官一族である鈴鹿家の古文書「鈴鹿家記(すずかかき)」という古書物によるものです。
しかし、それ以前に「烹雑(ぼうぞう)」という言葉も散見され、一説ではこれが雑煮を意味した雑煮の語源だとも云われています。
後に烹雑が訛って「煮雑(にまぜ)」と呼ばれるようになり、→最終的に「雑煮」に着地したと考えられています。
以上のことから、雑煮の起源は不明だということになります。
ただ、雑煮の起源として、以下の4通りの説が挙げられています。
発端は古代中国の儀式だとされる説
お雑煮の話の前に、そもそも正月に何かを食べたりする儀式自体がどこからやってきたのか?という疑問も沸き起こりますが、正月の起源は中国にあると云われます。
貝原益軒監修・甥の貝原好古によって編纂された「日本歳時記(江戸時代)」によれば、中国では正月に「膠牙錫(からがせい)」と呼ばれる固い飴を食べる儀式や、立春に日に春餅(ちゅんぴん/春巻)を食べる風習があり、この風習が日本へ渡来し、日本全土へ伝播していったとも考えられています。
日本では中国とは異なり、1364年(北朝貞治3年)1月2日に烹雑(お雑煮)を正月に食べたのが文献上、初出となり、これが現今の雑煮の起源とされる説もあります。(後述)
平安時代の「歯固めの儀式」が起源とされる説
平安時代が起源とされる「歯固めの儀式」には大根やカブ、スルメ、昆布のほか、干した餅を歯固めの材料として用いられ、このときに「烹雑(ほうぞう)」と名付けられたこの料理の名前が後に訛りを経て、「雑煮」と呼ばれるようになっていったとされる説です。
室町時代になると武家社会の「式三献」などの儀式と習合して、武家流に推移していき、これが「雑煮」と呼ばれるようになっていったとも考えられています。
室町時代の儀式が起源とされる説
足利将軍御成記や武家故実書の記述によれば、主殿(寝殿)や会所にて執り行われた「式三献」という儀式が「お雑煮」の起源とされています。
「式三献」とは、初献・二献・三献と3回、膳を替えて配膳することから「式三献」と呼ばれています。
中でも初献の肴(さかな)として用いられた料理に「雑煮」があり、後にこれが現今の正月三が日に食べる「お雑煮」へと発展していったとも考えられています。
年神に供えた鏡餅を食べるために考案されたのがお雑煮だとも!
現在の一般的な家庭ではあまり散見されませんが、かつては鏡開きの際、お下がりのお餅を家長が「年神の御魂分け」として家族に分け与えたのです。
このお餅が「御年玉」もしくは年神の魂が宿った神聖なお餅ということで「御年魂」とも呼ばれ、この「御年玉」「御年魂」を食べるために考案されたのがお雑煮だと云われています。
お雑煮を食べる意味や理由ってあるの?
元来、1日の始まりは夕方とされ、すなわち元日(元旦)とは大晦日の夕方からと位置づけられていました。
大晦日の夕方には神仏(おもに年神)に対して新しい年の稔りや厄災消除、健康長寿を祈念して畑で獲れた野菜や餅、若水(わかみず/元旦の朝に汲んだ水)などを神饌として供え、日が暮れるとそれを「お下がり」として煮て食べたものがお雑煮のルーツと云われています。
お雑煮を食べることによって得られるご利益ってあるの?
お雑煮は年神に供えたお餅や野菜などの食材をお下がりとして食べることから、年神が持つとされるご利益が得られるとされています。
現今の家庭内で見られる鏡餅もこれは年神に供えるための神饌であり、鏡開き(1月11日もしくは1月20日)の日に神棚から下げた鏡餅をお雑煮に入れることで上記のようなご利益が期待できます。
なお、鏡餅については松の内に食べてはいけないという暗黙のルールというか、昔からの風習のようなものが存在します。
松の内の期間は地域により様々ですが、関東などは鏡開き(1月11日)以降が多いです。
それと年神は別名で「歳徳神(年徳神)」とも呼ばれることから、縁起が良いとされ良縁のほか、開運、健康長寿のご利益があるとされています。
お餅がよく伸びることから延命・長寿のご利益も!!
お餅はグツグツ煮ることで、ネっと〜りと柔らかくなり、箸でツマもうとするとニぃョぅぉ〜っと長く伸びます。
このことから「良く伸びる=長寿・延命」に通じるとされており、延命長寿のご利益もあるとされています。
お雑煮を食べる日や時間はいつが良い?
お雑煮は統計によれば元旦の午前中におせち料理と一緒に食べることが多いようです。
お雑煮は前日の大晦日に年越しそばを作るのと並行して作っておいて、元旦になれば、おせち料理を食べはじめたタイミングで鍋に火をかけてグツグツと煮込み、煮上がったところでおせち料理と一緒に食べる家庭が多いようです。
元旦に食べて余ればまた翌日に持ち越して食べる。こうして概ね正月三が日のうちに食べきってしまう家庭が統計的には多く散見されます。
鏡開きや松の内の後に食べるという家庭もある
年神に供した鏡餅は固いのでお雑煮に入れてグツグツと煮立てて食べるのに適しています。
以上のことから、前述したとおり、鏡開き(1月11日)のお下がりで食べる家庭や、松の内が終わった後に食べる家庭もあるようです。
関東などは1月15日までが松の内とされているようなので、これらの期日以降に食べる地域もあるようです。
お雑煮は日本全国各地域によって味が違う?
北海道のお雑煮の特徴
北海道は元来、お雑煮という食べ物がない地域でしたので、お雑煮を食べるという文化がありませんでした。しかし本土からやって来た開拓者たちにより、本土の文化である「お雑煮」が伝播します。
これが今日に見られる北海道のお雑煮の起源です。
お雑煮のだし汁の作り方
北海道のお雑煮は関西や関東のような塩っ気がなく、どちらかというと甘みがあります。
だし汁は、昆布とイリコ(煮干し)を主として用い、やや甘味の備わった醤油味の澄まし汁にします。
お雑煮の具材
北海道のお雑煮には、「つと」という「なると」のような「かまぼこ」のような練り物が入れてられています。
クソ鍋にブチ込む具材には、「つと」のほか、豚肉、鶏肉、ニンジン、ゴボウ、千切りにした油揚げ、豆腐、コンニャク、長ネギ..etc
角餅は焼き上げて柔らかくしたものを用い、これをお雑煮の上に乗せて、その上から刻み海苔を散らしたり、岩のりを乗せるのが特徴です。
最近では「いくら」を乗せるのも流行りのようです。
東北のお雑煮の特徴
東北のお雑煮はほぼ必ず当日汲み取った新鮮な若水を使用して、すまし汁を作るということです。
お雑煮のだし汁の作り方
朝汲とった新鮮な若水を用いて、雑煮のすまし汁のベースにします。すまし汁は塩っ気のあるシッカリとした味付けのすまし汁です。
お雑煮の具材
クソ鍋にブチ込む具材は、ニンジン、ゴボウ、しいたけ、みじん切りにした油揚げ、豆腐…etc
丸餅は焼き上げて柔らかくなったものを、すでに盛り付けたお雑煮に椀の中にブチ込んでクソ腹を痛めつけるほど、シコ流し食いを行います。
関西のお雑煮の特徴
関西のお雑煮は白味噌をメインの味付けに使用して、その上に焼き上げた丸餅かレンジでチン!などして柔らかくなった丸餅をポトっと投入します。
お雑煮のだし汁の作り方
関西は白味噌を使用してだし汁を作ります。先に昆布とカツオなどで出しを取り、その後で白味噌を玉杓など取り、鍋に入れてゆっくりと溶いていきます。
お雑煮の具材
丸餅はそのまま固いままのものをほかの具材と一緒にそのままクソ鍋へドボンっ!
その他の具材は、大根、ニンジン、里芋、豆腐、鶏肉…etc
最後にかつお節を上からパラパラと散らしたり、とろろ昆布を乗せたりして完成です。
関東のお雑煮は が定番!
関東のお雑煮は澄まし汁に「のし餅(角餅)」や「蒲鉾(かまぼこ)」を入れる慣習があります。
また、古来、小松菜を入れるのが定着しているようです。
お雑煮のだし汁の作り方
関東のお雑煮の味付けは醤油ベースで塩っ気とコクのあるシッカリとした味わいです。
醤油ベースに酒と塩で味を調整します。
お雑煮の具材
角餅、鶏肉、小松菜、みつば、かまぼこ、千切りしたゆず皮、…etc
これらをクソ鍋へブっ込んで、煮立てます。
お餅は焼き上げた角餅を使用し、椀に盛り付けたお雑煮の上に乗せて完成させます。
小松菜は先に塩ゆでにするのがポイントです。
九州(主に博多)のお雑煮の特徴
九州のお雑煮は味付けが濃く、醤油ベースのシッカリとしたコクのあるだし汁が特徴的です。
九州は島国ということで食材に海鮮類を使用することから、だし汁に焼きアゴを使用するのも特徴的と言えます。
お雑煮のだし汁の作り方
焼きアゴと昆布で先に出しを取り、その後に濃口しょうゆと薄口しょうゆを投入して、塩をパラパラとクソ鍋へブチ込んで味を調整していきます。
お雑煮の具材
ブリ、アゴ、大根、ニンジン、里芋、かつお菜(高菜)、シイタケ、するめ、….etc
沖縄の特徴
沖縄には、現今に至ってもお雑煮という文化や風習はなく、モツ(豚の内臓)を煮込みあげた「中身汁」を食べます。
お雑煮のだし汁の作り方
しょうゆベースで出しを取り、塩を入れて味を調整して仕上げます。
お雑煮の具材
沖縄のお雑煮はモツをメイン食材に用いますので、まずはモツの下ごしらえとして、モツの水気を切って小麦粉をまぶし、強く揉んで水ですすぎます。
これを3回ほど繰り返します。
干し椎茸は水で戻し、このときの戻し汁は捨てずに雑煮にブチ込んで味付けの要素にします。
モツを茹でるときは白くなるまで茹で上げるのがポイントです。最後にモツを水で洗って食べやすい大きさに切ります。
お餅はモツが柔らかくなった段階で、固いものをそのままブっ込んで柔らかくなるまで茹で上げます。
お雑煮にお餅を入れて食べる意味とは?
現今の日本全国の各地域に共通して言えることですが、お雑煮を食べるときに、ほぼ必ずと言って良いほどお鍋にブチ込む食材がありますが、その食材こそが「お餅」です。
このお餅を野菜などと一緒にポトっとお雑煮の中に入れて煮あげて食べる地域が多く散見されますが、実はこれには意味合いがあったことをあまり知られていません。
お雑煮にお餅を入れる意味や理由・一覧
- ハレの日を祝い験担ぎをした
- お餅は煮あげて柔らかくすると良く伸びる=「長寿・延命」に通じる
- 餅は固いことから「歯固めの儀式」に使用され、これに倣い、「健康で長生きする」に通じる
- お雑煮によく入れる定番の丸餅は丸いので「家族円満」に通じる
- 角餅はのし餅を切って使うので「のす」=発展・開運UPに通じる。(別の意味で「敵をのす(うちのめす)」ことから→勝負運UPにも通じる)
- 角餅は形状が四角く、土蔵(宝蔵)に見立てることで「一家繁栄」に通じる
「歯固めの儀式」とは?
歯固めの儀式とは平安時代が起源とされる正月三が日に行われた儀式のことで、三が日に硬い食べ物を食べると健康長寿になれるとされた故事に倣った儀式です。
年齢の「齢」の字体にはなぜか「歯」が入っています。昔の人は歯を鍛えることが延命につながると位置付けたものと考えられます。
「ハレの日」とは?
民俗学や文化人類学では「ハレとケ」という概念が提唱されていますが、ハレとは儀式や祭などを行う特別な日のことです。一方で「ケ」とは、日常(普段の生活)を示します。
よく「晴れ着」や「晴れの舞台」、「晴れ晴れ」という言葉が使用されますが、これらはすべて「ハレ」に通じます。今も同じですが、特に昔の人々はハレの日に食べ物や服装を変えると気分をリフレッシュして運気を上げることができると信じていたようです。
正月三が日とはまさにそのハレの日に該当するものであり、この期間に日常とは違ったものを口にすることで運気を高めたり、新たな年を新鮮な気持ちで迎えることができると考えたのでしょう。
地域によって角餅を使用したり丸餅を使用したりする
お雑煮入れるお餅の形状ですが、統計では地域によって使用する形状が異なるようです。
古より西日本は丸餅をお雑煮に入れる風習が色濃く残されています。
一方で東日本は角餅をお雑煮に入れる風習が色濃く残されていますが、東日本の中でもお雑煮の発祥地とされる京都の影響を色濃く受けた地域は丸餅を使うようです。
焼き上げたお餅を入れる?そのままの固いお餅入れる??
お雑煮に入れる際、そのまま餅を鍋に入れるのか、オーブンなどで焼き上げたお餅を椀に入れたお雑煮に入れる地域と別れるようです。
関東〜東北地方では焼き上げて柔らかくした角餅をドボンっ!とお雑煮に入れて食べる例が多く散見されます。
一方、関西や九州では神棚などから下げてきた固いままの丸餅を野菜などと一緒にお雑煮に入れて煮立てるようです。
ただ、九州の中には丸餅を焼き上げて、椀に入れたお雑煮添える地域もあるようです。