初夏も過ぎた頃、いよいよ夏本番を迎える時期になり、日本では梅雨に入ります。別名で「入梅」とも呼ばれるこの梅雨時期を司る二十四節気こそが「芒種」です。
芒種は穀雨と重なる恵みの降雨の季節です。芒種の雨が穀雨の雨と異なるのは、梅雨という長雨が降り続く日が幾日も続きます。
これから夏本番を迎えるに前に長雨の恵みによって大地は水分を充分に蓄え、日照りが続く夏本番に備えます。言い換えると一夏を越すための大切な準備期間とも言えます。
以下では、この「芒種」の読み方や意味と、併せて芒種の旬な食べ物や行事・風習をご紹介しています。
目次
芒種の2023年・2024年・2025年・2026年の日はいつ?
- 2024年の芒種の日は6月6日(木)!
年 | 正確な時間 (UT基準) | 日本の芒種に日にち | 中国の芒種の日にち |
2023年 | 6月6日 22:18 | 6月5日 | 6月6日 |
2024年 | 6月5日04:10 | 6月5日 | 6月5日 |
2025年 | 6月5日09:56 | 6月5日 | 6月5日 |
2026年 | 6月5日15:48 | 6月6日 | 6月5日 |
※参照先:「ウィキペディア」
芒種の読み方
「芒種」は「ぼうしゅ」と読みます。
二十四節気は中国由来の言葉なので、すべて音読み+音読みの熟語となっています。
芒種とは?
芒種とは、二十四節気・七十二候の「立春」から始まる春の節気の9節(9番目)のことを指します。
また、二十四節気を二分した各12節気のうちの「中気(ちゅうき)」を除いた「正節(せいせつ)」に属します。
芒種の前の節気は「小満(しょうまん/5月21日頃)」で、小満から数えて15日目くらいとなる6月6日頃が芒種です。
芒種の後の節気は「夏至(げし/6月22日頃)」になります。
ところで・・「二十四節気」とは?
二十四節気とは、1年を24つ分けて、それらを1つ々々を「節気」と定めて。その節気に季節を司る言葉を付したものが二十四節気です。
1年を夏至と冬至の2つに分け、さらに春分と秋分の2つに分けて4等分とします。(二至二分)
- 365日÷4=91.25日
二十四節気はこの二至二分を基軸としています。
そして、それぞれの中間に立春、立夏、立秋、立冬を入れて8等分したのが、約45日間ずつの「八節」です。
- 365÷8=45.625日
さらに、八節を約15日ずつに3等分したものが二十四節気です。現行の二十四節気は、立春、立夏、立秋、立冬が各季節(四季)の先頭に来るように配置しています。
二十四節気は、中国から日本に伝来した生粋の中国文化ですが、中国と日本の時節(いわゆる季節感。動物・植物・気象など)が異なるため、日本では江戸の改暦(1842年/天保改暦)を経て、明治の改暦を経ながら日本の季節感いわゆる物候(ぶっこう)に沿わせるように改訂されています。
節気は各月に2つ存在し、毎月、「節」と「中」の節気が交互に来るようになっています。
「節」は「正節(せいせつ)」とも言い、「節気」とも呼ばれます。各月の前半に配置されるのが、この節です。
「中」は「中気(ちゅうき)」とも言い、略称で「中」とも呼ばれます。
現行の二十四節気は中国の太陰暦(月を参照した暦)を補完する目的で、逆の発想で太陽を参照して作暦されていますので、現在の太陽暦(グレゴリオ暦)に至っても、極度に形態を変えることなくそのまま使用され続けています。
- 関連記事:二十四節気 一覧表
- 関連記事:二十四節気の意味や由来・覚え方と決めた方の起源を解説!
芒種の節気(期間)はいつからいつまで?
芒種の前の節気は「小満(しょうまん)」で5月21日頃〜6月5日頃までです。したがって芒種は、新暦(現在の太陽暦)で言えば6月6日頃を指します。
もしくは6月6日頃から始まる節気(期間)を指します。芒種の場合はその次の節気である「夏至(げし)」の前日までとなる「6月6日〜6月21日頃までです。年によっては1日前後します。
芒種とは「特定の日」を指すのではない!
二十四節気は半月単位で節気が区切られています。したがって厳密に言えば「芒種の節に入る日」を意味します。
半月とは約15日になりますので、このどこかで芒種の節気で解説されているような季節感を感じて、本格的に芒種の節気に入ったことを意味します。
もちろん、世間一般では特定の日が節気の境目として、特定の日のみが言葉で交わされる感は否めません。しかし、それが世間通念上まかり通っているのも事実であることから、完全な間違いとは言い難いものがありんす。
ただ、これは本来は正式ではないということを理解しておきたいところです。
芒種は旧暦ではいつ?
芒種を旧暦で表記すると、5月最初の節気となる「五月節(午の月の正節)」であり、具体的には五月上旬頃になります。
「芒種」の次の節気である「夏至」が「五月中節(午の月の中気)」となります。
芒種の前の節気は、「小満(しょうまん)」で4月最初の節気の次の節気となる「四月節(巳の月の正節)」になりんす。
現行の定気法では太陽が黄経約75度の点を通過したあたりになります。
定気法とは?
定気法とは、1844年(天保15年/江戸時代後期)の天保暦より使用された暦法であり、太陽が黄道を15度ずつ進むたびに節気を設けた暦法になります。それまでの平気法を改訂した暦法です。
節気間の日数は毎年差異が生じることから、旧暦2033年に9月と10月がなくなってしまうなど大きな問題に直面しています。
「芒種」の言葉の意味
「芒(ぼう)」とは?
「芒(ぼう)」とは、芒(のぎ)とも読むことができ、これは米や麦などのイネ科の小穂の先端にある刺々しい針状の突起のことです。
芒は、漢字で「禾(のぎ)」とも書かれますが、これは穀物の穂が垂れた様子を表現した字体になります。
ちなみに稲穂の「穂」は「禾に恵」と書きます。
解すると「穀物の恵み」となりますが、穀物(特に米)を主食とする我々、日本人にとって米の恵みとは、何にも代えがたい恵みとも言えます。
「種」とは?
もう一つの「種」の方はそのまま「タネ(種)」を意味します。
「芒種」という言葉の由来
すなわち、まとめると芒種とは「穀物のタネを蒔く時期」に由来した言葉であり、これを短くまとめた言葉が「芒種」です。
「種を蒔く」ということは”濃厚”なほどに”農耕(田植え)”が本格的にスタートすることを素敵に意味する。
芒種の暦便覧(こよみ便覧)
『芒(のぎ)ある穀類、稼種する時也』
「稼種」とは、「稼」と「種」に分けると理解しやすいのですが、「稼」の意味合いは日々の暮らしの生計を立てるために精を出して働くことを意味します。他に「穀類をうえつける」「実った穀類」「うえつけた穀類」という意味も持ちます。
一方、「種」は亀田の柿の‥ではなく、「植物の種(タネ)」!!もしくは「物事が大きくなったもと」や、「物事が大きくなったはじめのもの」などの意味合いがあります。梅味ヤバい
すなわちこれらをまとめると稼種は、「うえつけた穀類が大きく実った」という意味合いになります。
「稼種=収穫」ではない!
穀類が稼種まで至れば、その先に待ち構えているのは「刈り入れ時」。
俗に言う「収穫どき」です。ここでの注意点は「稼種=収穫」ではないということ。
暦便覧とは?
暦便覧とは、正式には「こよみ便覧」と書き、「こよみべんらん」と読みます。
この書物は、1787年(天明7年)に江戸で出版された暦の解説書であり、 太玄斎(たいげんさい)という人物が著した古書物です。
太玄斎というのは名前ではなく「号」であり、本名は「松平頼救(まつだいら よりすけ)」と言います。
松平頼救は常陸宍戸藩の5代目藩主でしたが、隠居して嫡男・頼敬に家督を譲った後、太玄斎を称しています。
芒種の季節感・時節
芒種の時期を示す言葉としては、「梅雨(梅雨入り・入梅)」「田植え」が挙げられます。
芒種の頃は、一般的に田植え時期とされており、苗代の稲が育ち本格的な田植えの頃合いを迎えます。
二毛作をしている農家ではこの時期、小満の七十二候にも「麦秋」と記されているように、まずは、成熟した麦の収穫を行います。
麦の収穫を終えた後、空いた田んぼに苗代で育った稲を植え込んでいきます。すなわち田植えです。
一昔前の田植えの概念とは、田の神に豊作の祈願を行い、その年の実りを田の神に供するという意味合いで、神に対して行う神聖かつ重要な行事でした。
したがって、手で稲を1本々々、手植えしていくときも、心で豊作を祈念しながら植えていくのです。
また、梅雨入りの時期でもありんす。
現在までの通説では梅雨の意味は主に次の2通り考えられています。
「梅雨」の言葉意味とは?
- 梅が黄色く熟す時期に降る長雨という意味合いで梅雨と名付けられたとされる説
- そうではなく逆に長雨が梅の生長を促し、黄色く成熟させるという説
また、梅雨時期に入る時期という意味合いで、雑節においては「入梅」と記されます。
現在の梅雨入り時期は年々、ズレが生じているため変動がありますが、二十四節気における暦上では芒種の時期です。
時には雨がいっこうに降らない「空梅雨(からつゆ)」という年もあったり、5月や7月に梅雨が到来したりもします。
しかし、一昔前の梅雨入りの頃合いと言えば、「芒種の後の最初の壬(みずのえ)の日」と捉えられていたのです。
梅雨入り=入梅
なお、梅雨入りすることは、雑節の1つにも採用されており、雑節においては「入梅(にゅうばい)」と呼称します。
現今の暦は明治の改暦を経た暦になりますので、入梅は太陽軌道の黄経80度に達した時点、日付で示すと例年6月11日頃になります。
入梅の意味や梅雨が「つゆ」と呼ばれる理由に関しては下記ページを参照してください。
芒種の七十二候
「七十二候」とは?
二十四節気をさらに72に分割した「七十二候」と呼ばれる暦法もありんす。
七十二候は二十四節気をさらに細分化し、日本の風土に合わせた各季節においての気象や動植物の変化を分かりやすく解説しています。
したがって二十四節気が抽象的表現の暦であるならば、それをもう少し具体的にしたものが七十二候ということになりんす。
七十二候には「初候」「次候」「末候」という3つの期間(候)を設け、それぞれの期間の季節感にマッチした季語が割り当てられています。
例えば、この芒種も七十二候に当てはめると3つの期間(候)に分けることができます。ウフ
初候(5月21日頃~25日頃):螳螂生(かまきりしょうず)
意味:螳螂(カマキリ)が卵から生まれ出る
螳螂生とは?
「螳螂生」とは、「螳螂」と「生」に解体すると理解が早いのですが、蟷螂(かまきり)が卵から孵る時期(生まれてくる時期)ということです。
蟷螂は4月に産卵し、5月〜8月にかけて孵化します。その数もわずか3㎝〜5㎝サイズのピっこい卵から200匹ものカマキリが生まれてきます。
蟷螂が七十二候に集録された理由は、蟷螂が農家にとって重要な役割を持つ昆虫だからに他なりません。
螳螂生の詳細については下記ページを参照してください。
関連記事:螳螂生の意味・由来・読み方
次候(5月26日頃~30日頃):腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)
意味:腐った草の中から光を放った蛍が現れ出す頃
腐草為蛍とは?
ストレートに読むと「腐った草がホタルになる」となりますが、これだと表現が曖昧で少し理解に苦しみます。
「腐った草」とは水辺に群生する雑草の中にも枯死した草が出没し、その草のことを指すのでしょう。その腐った草たちが倒れ込んだ下の地面から幼虫から羽化したホタルが夜空を舞う。‥など意味合いになります。
ホタルは一生の大半を水中で過ごしますが、成虫になる頃合いになると水中から這い出てきて地中にもぐりこんで、蛹化します。(サナギになる)
少しロマンチックな表現ですが、昔はこのような表現を子々孫々、語り継いだのではないでしょうか?
古き良き時代のズッシリと、重く心に響く言葉のように思えます。
関連記事:腐草為蛍の意味・由来・読み方
末候(5月31日頃~6月4日頃):梅子黄(うめのみきばむ)
意味:梅の実が黄ばんで熟す頃
梅子黄とは?
梅は毎年春先(2月〜3月頃)に花弁を付け、6月〜7月に果実が成熟します。成熟した梅は梅酒や梅干しに使用されたり、ジャムや健康食品などにも使用されます。
梅酒にする梅は5月中旬頃に収穫した俗に「青梅」と呼ばれる梅になります。
関連記事:梅子黄の意味・由来・読み方
梅雨を迎えるに際しての心構え
体調管理に注意!
芒種の頃は、梅雨入りする時期ということもあり、湿度が上昇します。すなわち蒸し暑くなるということです。
湿度が上昇するとイライラとしたりして落ち着かなくなったり、人によっては気が滅入ってしまって何も手につかなくなることもあると思います。
中には蒸し々々することからエアコンを24時間つけっぱなしで入れる家庭もあるでしょう。
こうした季節の変わり目で注意しなければならないのが、体調管理です。
蒸し暑くなったら、冷たい物を過度に摂取したり、集中力が散漫になりがちです。昔の人々はこういった時に食べ物から栄養を摂取して体調管理する方法を知っていたので、その季節に応じた食べ物や調理法をよく知っていたのです。
現代ではレトルト食品などで季節関係なく摂取することができますが、やはり、新鮮かつ旬な野菜や果物とは成分が異なりますので栄養価も異なります。できるだけ旬なものを摂取するような心がけが必要です。
「むくみ」に注意!
上述したように、梅雨時期に入ると高温多湿になります。高温多湿になると注意しなければならないのが、体内の余分な水分が体外へ排出されにくくなり、体内水分が停滞してしまいがちになることです。
この状態になると、身体の彼方此方で「むくみ」が生じやすくなります。
「むくみ」は体型がブヨブヨに見えるだけではなく、血管を圧迫しますので、血流も悪くもなり、冷え性の原因へとつながっていきます。
「むくみ」を起こさないようにするためには、水分代謝の上昇が見込めるような旬な食材を摂取する必要がありますが、この芒種時期の代表的な食材に「新ショウガ(生姜)」が挙げられます。
ショウガに含まれる辛味成分のジンゲロールが発汗作用を促し、水分代謝を上昇させてくれます。
新ショウガ(ショウガ)はできるだけ加熱せずに生で食べる方が効果的なので、刺身や冷奴、そうめんつゆに「スリつぶした」ものを入れたりして食します。
また、新生姜は甘酢漬けにしたものがパウチ包装され、よくお寿司のガリという付け調味料についています。
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