このページでは二十四節気「夏至」の七十二候における「乃東枯」「鹿角解」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。
目次
乃東枯の読み方
乃東枯は「なつかれくさかるる」と読みます。
乃東枯とは?
乃東枯とは、二十四節気の「夏至(げし)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の1節です。
72の節気を持つ七十二候においては「第二十八侯(第28番目)」の節気、「初候(しょこう)」にあてられた語句になります。
太陽の黄経は90度を過ぎた地点です。
夏至期間中のその他の七十二候の種類・一覧
初侯:乃東枯
次侯:菖蒲華
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末侯:半夏生
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乃東枯の意味・由来
日本(略本暦)での解釈
「乃東枯」の意味は、「乃東」「枯」とで分解すると分かりやすくなりますが、「乃東」は「だいとう」と読み、これは「夏枯草(カコソウ)」の古称になりんす。
また、夏枯草と書いて「なつかれくさ」とも読まれます。
「夏枯草」という名前の草はあまり耳にしないと思いますが、実はこれは「靫草(ウツボグサ)」のことです。
これに「枯」を付すことで「ウツボグサが枯れる頃」と解釈されます。
ウツボグサとは?
靭草(ウツボグサ)はシソ科ウツボグサ属のの多年草です。ウツボグサは風変わりな花で、なんと!冬になると芽吹き、夏時期が過ぎた頃に枯れます。
通常の草花であれば、春に芽吹いて夏に太陽の光を浴びてすくすくと成長し、冬に枯れるのがセオリーのようなものです。
このようにウツボグサは通常の草花とは逆の発想を有する生態であることから、夏と冬の季語として用いられています。
ウツボグサの開花時期
詳しくは冬至(12月22日頃)に芽吹き、6月~7月頃に開花します。花は稲穂のような形状をしていることから「花穂(かすい)」とも呼ばれます。
⬆️花穂(https://ja.wikipedia.org)
開花した後、夏至(6月22日頃)から→8月までにおおむね枯れますが、厳密に言うと間違いです。結実した後、花穂部分が鮮やかな紫色から→褐色に変色することから枯れたように見えるだけです。花自体は生きています。
中国では「夏枯草」と書かれますが、日本でも医薬関係で「夏枯草」と書かれることがあります。この理由は夏枯草は和漢の生薬の表記名であり、漢方として用いられるためです。
6月〜7月頃に開花し、枯れかかってくる頃(褐色じみた頃)に刈り取られて、天日干しされた後、「夏枯草」として漢方薬にされます。
ウツボグサの名前の由来
「ウツボグサ(靫草)」名前の由来は、侍が弓矢を入れておくために背中に背負った入れ物である「靭(うつぼ)」に花弁の形状が似ているところからきています。
ヨーロッパでは「セルフヒール(Self Heal)」、もしくは英名で「ヒールオール(Heal All)」とも呼ばれます。
漢方としてのウツボグサの効能・効果
漢方としてのウツボグサの効能・効果は、はれ物、腎炎(じんえん/腎臓の炎症性疾患)、膀胱炎、脚気(かっけ/足がしびれたりむくんだりする症状)、強壮剤、うがい薬などです。
乃東(夏枯草)=ウツボ草ではない?
一説には、「乃東(夏枯草)」と「ウツボ草」は同種の花ではないとする説もあるようです。
この理由は、ウツボ草は6月〜8月にかけて紫色の花弁を付けることから、逆に夏至(6月22日頃)に枯れる(褐色に変色する)乃東(夏枯草)とは、事実関係の辻褄が合わなくなります。
ただ、ウツボ草も夏枯草と同じ効能・効果があることから、時代を下りながら混同されてやがて同一に至ったとも考えられます。
「乃東枯」は七十二候「乃東生」とセットになっている!
「乃東枯(夏枯草)」は冬至(12月22日頃)に芽吹き、6月~7月頃に開花することから、二十四節気「冬至」の七十二候・初候の第64候にも集録されています。
「乃東生」と書いて「なつかれくさしょうず」になります。乃東枯の方は「なつかれくさかるる」になりますので、こうして見比べてみると対で集録されているのが分かります。
意味合いは「夏枯草が芽吹く頃」になります。
他の草は枯れて行く中、夏枯草は芽吹いて冬の到来を告げます。
中国(宣明暦)の夏至の初候・第二十八侯の七十二候は「鹿角解」!
中国における夏至の初候・第二十八侯の七十二候は「鹿角解」になります。読み方は「しかつのおつ」になります。
鹿角解の意味
「鹿角解」と書いて「鹿が角を落とす頃」という意味になりんす。
鹿の角が落ちるのではなく、「解ける(とける)」、として「解除される」としているあたりの表現技法がユニークです。
ただ、「解」と書いて「もとの状態に戻す」とも解釈されています。…と、考えてみれば解釈にも「解」が‥はてさて。
鹿角の成長と季節の移ろい
鹿の角は8月中頃〜10月初旬頃に完成し、3月頃にポロっと自然に落ちます。再び4月頃に袋角というカサブタのような角がヒョッコリと生えてきて成長していきます。
ただし、これは日本に生息する「奈良鹿」に代表される「ニホンジカ」を例にしていることから、中国の鹿の生態とは異なります。(北満州では「麋」と書いて「トナカイ」を指すそうです。)
七十二候が成立した頃の中国の鹿と言えば「梅花鹿」や「シフゾウ」が挙げられます。気候・気象条件も日本とは異なることから、およそこの夏至の頃に角を落とすのでしょう。
関連記事:鹿の角切りをする理由
「麋角解」と「鹿角解」の違い
「麋鹿」という言葉を調べると「大鹿と鹿」と解説されているように、「麋」とは「大きな鹿」を意味し、「鹿」とはそれより小さいサイズの鹿を指し、双方を以って鹿の種類を分けていることに気づきます。
実は、冬至の七十二候・次候に「麋角解(12月27日〜30日頃)」という節気があり、ここで「麋(び)」という漢字が用いられていることから、この意味は大鹿のことを限定しているものだと考えられます。
この大鹿の角は「麋角(びかく/鹿角)」と書かれ、中国の大鹿と言えばトナカイや前述のシフゾウが該当します。
大きな鹿とスモールな鹿?(通常サイズの鹿)とで、落角時期が夏と冬?‥と、これほど異なるものなのかとあらためて大自然の摂理について考えこんでしまいます。
「乃東枯」「鹿角解」の日にち(期間)
- 太陽暦:6月21日〜6月25日頃
- 旧暦:五月中(五月の中気)