このページでは二十四節気「寒露」の七十二候・初候における「鴻雁来」「鴻雁来賓」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。
目次
鴻雁来の読み方
鴻雁来は「こうがんきたる」と読みます。
鴻雁来とは?
鴻雁来とは、二十四節気の「寒露(かんろ)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の第1節です。
72の節気を持つ七十二候においては「第四十九侯(第49番目)」の節気、「初候(しょこう)」にあてられた語句になります。
太陽の黄経は195度を過ぎた地点です。
寒露期間中のその他の七十二候の種類・一覧
初侯:鴻雁来
次侯:菊花開
末侯:蟋蟀在戸
鴻雁来の意味・由来
日本(略本暦)での解釈
「鴻雁来」の意味は、「鴻」「雁」と「来」とに分解すると分かりやすくなります。
「鴻雁来」の意味
「鴻」の意味
「鴻」は「こう・おおとり」と読み、「大形の水鳥」を意味します。
「雁」の意味
雁とは、「がん」と読み、これはカモ科の大形の水鳥になります。カモ科なのでカモに姿形がソックリくりくりクリリンです。気円斬
「来」の意味
「来る」は、そのまま「来る」を意味します。
以上、まとめると「鴻雁来」の意味とは、『大形の雁が来る頃』もしくは『雁が飛来してくる頃』となりんす。
鴻雁北と鴻雁来はセット!
二十四節気「清明」の七十二候第14候にも類似した「鴻雁北(こうがんかえる)」がありんすが、これは逆に雁が北(シベリア)へ帰って行くという意味になりんす。
すなわち、これら2つの節気で雁が飛来する季節と、鴻雁が飛びさって行く季節を表しています。
七十二候には「鴻雁」の節気が多い!
七十二候には鴻雁に関しての節気が日本、中国ともにいくつかありんす。
日本(略本暦)
- 「鴻雁北」清明の初侯(4月10日〜14日頃)
- 「鴻雁来」寒露の初侯(10月8日〜12日頃)
中国(宣明暦)
- 「鴻雁北」雨水の次侯(2月23日〜27日頃)
- 「鴻雁来」白露の初侯(9月7日〜11日頃)
- 「鴻雁来賓」寒露の初侯(10月8日〜12日頃)
二十四節気 七十二候は中国が起源とされ、その中国から日本に伝えられていますが、日本の七十二候は中国の七十二候を踏襲している部分がありんす。
七十二候をご覧になれば分かりますが、全体を通して鳥に関する節気が非常に多いことに気づきます。
中でも雁に関しては、中国には3つもありんす。
しかもこの寒露の節気の七十二候だけ「鴻雁来」に「賓」が付されて「鴻雁来賓」とされています。(意味は後述)
七十二候を作暦する際、鳥の行動をよく観測していたことが、これらの事実を以って明らかです。
雁の生態
雁は、9月頃になると北方(主にシベリア)から飛来します。その年の秋にはじめて飛来した雁は「初雁(はつかり)」とも呼ばれます。
雁の飛来地として有名なのが、宮城県北部の蕪栗沼、伊豆沼や、北海道の宮島沼、新潟県の福島潟などです。
今では信じがたい話ですが、なんとぉぅ!かつては東京近郊にも雁がたくさん飛来し、明治時代には切手の絵柄にもなったほどでした。
しかし、乱獲が相次ぎ、果ては都市開発の波に飲まれ、徐々に雁を見かける機会が少なくなり、現今に至っては皆無といえる状態にまでなっています。それゆえ、現在の日本では「保護鳥」に指定され、禁猟になっています。
春になると再び北方(シベリア)へ帰っていく!
日本ではツバメがスッカリcariカリ かりかり梅すっパ!‥‥的なほど、メジャーな存在で知られていますが、どんな度合いや ツバメは春になると日本に飛来し、ちょうど寒露(深秋)の直前あたりで暖気に包まれた南国へ飛び去っていきます。
これが一般的に「渡り鳥」と呼ばれる鳥になりんすが、それとは逆に雁は、わざわざ寒くなる頃にワザワザ寒冷地に飛来してきます。
この雁のような寒冷地を目指して年中移動する鳥を「冬鳥」と言います。
雁はカモのこと?
雁の外観を見れば分かりますが、実にカモにソックリくりくりな外見をしています。
確かに雁もカモも同じカモ属の野鳥ですが、次のような違いがありんす。
- カモより雁の方が体が大きく、首が少し長い。
- カモは一夫多妻制で子を作り、雁は一生涯同じ夫婦で過ごす。
- 雁は草食、カモは草食を主体としながら魚も食べる ….etc
かつて雁は皇室でも食されるような高級鳥でしたが、現在の日本においては保護鳥の対象となり、禁猟になっています。
雁渡し
「雁渡し」とは「かりわたし」と読み、これは初秋から中秋にかけて吹く北風のことです。
「雁渡し」の由来は、「雁が渡ってくる頃に吹く風」からきています。
この風は雁と一緒に秋の空気も運んでくることから、この風が吹くと秋の象徴たるウロコ雲が押し流され、一気に秋めいた澄みきった空が現れます。
まさに深秋と呼べる気候の到来です。
ゆえにこの風は「青い北風」書いて「青北風(あおきた)」とも呼ばれます。
秋を代表する季語です。
雁のV字型飛行に隠された秘密
雁は長い距離を飛行するので、できるだけ体力を温存する必要がありんす。
また天敵に狙われてもすぐに対処できるように、雁は群れを成して飛行します。
その雁が群れが飛行する姿として有名なのが「V字型飛行」です。
雁の群れがV字型で飛行する理由は、体力を温存するためです。
V字型の先頭に立つ雁が翼を羽ばたかせると上昇気流が発生し、後方の雁たちは、この上昇気流をうまく活用することで無駄に翼を動かすことなく飛行ができます。
しかしながら、シベリアから日本の北陸地方までの距離は約4000キロ、約2週間もの期間をかけて飛来してきますので、いくら先頭の雁が筋肉むきむきマッチョ野郎でも、これでは体力が持たずに力尽きてしまいます。
そこで雁はV字型飛行している際に、のぉぁんとぉぅ!先頭役を逐次、交代して微妙に隊列を変えながら飛んでいるんですぅ。いやぁ〜驚き♡ チュっ♡
現在までの調査によれば、総飛行時間の平均32%を上昇気流を活用して飛行していたことが明らかにされており、さらに若鳥の3分の1以上は飛行中の疲労で死に至ることまでも明らかにされています。
すなわち、1000㎞以上もの距離を体力を損なうことなく飛行していることがわかります。パソコンで言えばスリープモード
雁が群れをなして飛来してくる姿は雁行の陣形の由来にもなっている!
知ってましたか?
雁のV字型飛行する姿は戦国時代の戦の陣形にも採用されており、「雁行(がんこう)」という陣形が誕生しています。
画像引用先:https://ja.wikipedia.org
この陣形の特徴としては雁の行動をモチーフとしたのか、後詰が休息しているときに先頭が敵と対峙して牽制することができるんす。
雁がV字型で飛行する姿は秋の風物詩
平安時代を代表する歌人「清少納言」も、自作を代表する名作「枕草子」にて次のような一文を詠んでいます。
『雁などの連ねたるが いと小さく見ゆるは いとをかし』
これはV字型飛行する雁の姿が秋空と合わさって、なんとも言えない風情が生まれ、自身の心情と抱き合わせて、秋の風物詩として表現したものです。うきゃ
中国(宣明暦)での解釈
中国における寒露の初候・第四十九侯の七十二候は「鴻雁来賓」です。
読み方は「こうがんらいひんす」になります。
「鴻雁来賓」の意味
上述した鴻雁来に「賓」が付されていますが、「賓」とは客人のことを意味します。
しかしながら、読み方に注目してもらいたいのですが、「鴻雁来賓」と書いて「こうがんらいひんす」としています。
これはつまり、「鴻雁」と「来賓」とで隔てていることになり、「来賓」とは「客人」を意味します。
これを解すと雁が多数飛来して客人となる」となりんす。‥‥が!これだけだと、なんのこっちゃ意味アラレ‥状態です。どんな状態や
ただ、「来賓」という部分に焦点をあててみると、来賓とは遅れて訪れるものです。
つまり、来賓という言葉を引き合いに出すことで、渡り鳥の中でも遅れて南下してくる鳥と例えたのでしょう。
鴻雁来の日にち(期間)
- 太陽暦:10月8日〜10月12日頃
- 旧暦:九月節(九月の正節)