初夏の空に泳ぐ「こいのぼり」は、端午の節句に無くてはならないアイテムの1つです。
では、その「こいのぼり」の由来や歴史をご存知でしょうか?
今回は、「こいのぼり」に関する色々な事柄を子供にも簡単に説明できるように解説します!
これを読んだら、皆さんも「こいのぼり」博士です!
お子さんにも是非教えてあげてください!
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こいのぼりの起源・由来
こいのぼりの由来を子どもに簡単に説明するには・・
こいのぼりの由来は武士が戦場で使った、所属や任務(誰の仲間か)を表す小さい旗に、「神様どうか守ってください」という願いを込めたもの!
それでは詳しく説明していきましょう!
こいのぼりの起源・由来
「鯉」を「こいのぼり」として端午の節句に飾るという風習が見られるようになったのは、江戸時代からです。
それ以前は、現代の形とは少し違った「武者のぼり」がありました。
武者のぼりの起源は戦国時代です。
戦国時代に、戦場で戦う武将たちは「旗指物(はたさしもの)」を使いました。
「旗指物」とは、戦場で用いられた小旗のことです。
背にある筒に差し込み、所属や任務を表す目印となったものですが、合わせて、守護神に守ってもらいたいという願いが込められたものでもあります。
この旗指物に、「子供を守ってもらいたい」という願いを託したことから、男の子のお祭りである端午の節句に、旗指物を飾るという風習が生まれました。
その後、この風習を庶民も真似たことがこいのぼりへと繋がって行きます。
通常、旗指物には家紋だけが描かれますが、庶民が真似たものには、家紋の代わりに武者の絵が描かれることが多くありました。
「武者のぼり」と呼ばれたその幟には、中国に古くから伝わる魔よけの力を持つと言われる鐘馗(しょうき)と呼ばれる神様の絵や武者の絵が描かれました。
また、武者の絵と共に、立身出世の象徴として、鯉の滝登りが描かれていることも多かったようです。
このように、最初は武者の絵と共に描かれていた鯉の絵が、次第に独立し、鯉だけ描かれるようになったものが、こいのぼりの始まりでした。
【豆知識】こいのぼりの元になった中国の故事「登竜門」
こいのぼりの元になった中国の故事「登竜門」とは、「中国、黄河(こうが)上流の急流である登竜門(とうりゅうもん)を泳ぎ登った鯉は龍と化す」という内容の故事です。
中国大陸を流れる黄河の上流にある、竜門山の渓谷は、川幅が狭く流れがとても急でした。
多くの魚がこの急流を登ろうと試みますが、登りきることが出来たのは、鯉だけでした。
しかも、この急流を登り切った鯉は龍になると言われていることから、立身出世(りっしんしゅっせ)の象徴として、鯉のぼりは定着したのです。
ちなみに、立身出世のための狭き門のことを「登竜門」と言うのもここから来ています。
こいのぼりの「幟(のぼり)」の由来
幟(のぼり)とは、旗のことを指します。
平安時代以降に、主に戦場で使われていました。
幟を掲げることで、武士たちの士気を高め、敵味方の区別をつけるために掲げた、縦長の「流れ旗」が起源のようです。
鎌倉・室町と時代が進むにつれて、本格的な武士の時代の到来が幟の発展にも繋がりました。
幟には、家紋が入り、どの武家でも自身の軍の幟を作るようになったのです。
はじめのうちは形もバラバラでしたが、次第に形式が定まりました。
大きさは、高さが1丈2尺(約3m60cm)、幅が2幅(約76cm)前後です。
その後、幟は日本の軍旗として定着していきました。
明治時代以降には、幟は主に宣伝や広告用の旗として活用されるようになります。
現在でも、幟を見ることが出来ます。
例えば、大相撲の会場の力士の四股名を描いた鮮やかな幟や、歌舞伎や寄席、芝居小屋で役者の名前を入れて掲げたものなどが有名です。
また、商店街や寺院や神社の境内、選挙のときなど、色々なシーンで目にする身近な幟もあります。
現代の幟も、基本的には縦長のものが主流です。
実は、こいのぼりの「のぼり」は、「のぼり」と付いているものの、筒状に作成して風を多く通すところから見ても、旗というよりは吹き流しに近いものとされています。
戦場に掲げられた武士の士気を高めた幟と、親が男の子の成長を願って飾る鯉の形をした吹き流しは、時代を経て、混ざり合い「こいのぼり」と呼ばれるようになりました。
こいのぼりの歴史
こいのぼりの歴史を子どもに簡単に説明するには・・
武士の子どもの誕生祝に幟(のぼり)や吹流しを飾っていたものが広がって、こいのぼりになった。子どもの健康に育ち、活躍するようにという願いが込められている。
では、詳しく見てみましょう。
こいのぼりの歴史
そもそも、こいのぼりを出す「端午の節句」は、中国の風習と日本の風習が合体して広まった行事です。
そのため、こいのぼりも、中国と日本の風習が合わさり出来上がった風習です。
奈良時代に中国から伝わった「端午の節句」は、菖蒲(しょうぶ)を使う行事だったことが、日本の文化である「尚武」、「勝負」のような武道や戦いの言葉と重なり、男の子のお祭りとして定着してきました。
端午の節句の意味や由来などについては、当サイトの以下のページでご紹介しています!
江戸時代に入ると、男児の厄除けと成長を祈る行事となり、武家では、男児が誕生すると、災難や魔除けとして、玄関に幟や吹流しを立てていました。
特に、江戸時代の裕福な家庭や将軍家に男児が誕生した場合、一般の武家が出す幟や吹流しよりも、高価で豪華なものを飾りました。
例えば、家紋の付いた旗指物や、五色(赤・青・黄・白・黒)の吹流し、幟などです。
やがてこの風習は、商人などの庶民にも浸透して行きました。
この頃の商人は、経済的に裕福であっても、社会的な地位は低く、武士より下に見られていました。
そのせいもあり、武士を模した猛々しさを表現したものを好んで飾る傾向があったのです。
その後、庶民の間で、「武者のぼり」の武者絵に添える絵として、中国の故事にちなんだ鯉を幟(のぼり)に描くことが多くなっていきました。
その頃から、はじめは幟旗や五色の吹き流しなどを掲げていた武者のぼりも、徐々に鯉の絵柄に変わっていったのです。
当初は、紙に鯉の絵を描いたものだった鯉のぼりも、大正時代になると布で作った真鯉(まごい:黒色の鯉)になり、やがて、明治時代頃になると緋鯉(ひごい:赤色の鯉)ができて、昭和30年代に入ると子鯉(こごい)も登場し、色も鮮やかなこいのぼりが加わりました。
1本の竿に何匹も泳ぐようになったこいのぼりは、正に幸せな家族の象徴になったのです。
なぜ、鯉なのか?
「登竜門」の故事にちなみ、出世するようにという願いを込めたという意味の他、「鯉は強い魚だ」というのも、鯉が好んで描かれるようになった理由とされています。
鯉は、澄んだ水の中に限らず、池や沼などでも生きられる生命力の強い魚という性質から、そして川の流れに逆らい、登るように泳ぐこともできます。
また、比較的サイズも大きく、独特の鮮やかさも持っていることも魅力の1つでしょう。
環境の良し悪しにかかわらず、立派に成長するように願って飾られるようになったとも言われています。
ちなみに、中国の故事にちなんでいるこいのぼりですが、中国には、「立体的な鯉を作って大空を泳がせる」という風習はありません。
こいのぼりは、中国のみならず世界に類を見ない、日本独特の文化でもあります。
端午の節句(子どもの日)にこいのぼりを飾る意味
こいのぼりを飾る意味を子どもに簡単に説明するには・・
我が家に誕生した男児を「守って下さい」と神様へ祈りを込めた目印!
男の子の健やかな成長と、出世(将来の活躍)を願うという意味!
こいのぼりは家族。吹き流しは魔除け(悲しいこと、辛いこと、病気やケガなどを近づけさせない)のおまじないです!
それでは、詳しくご説明します!
端午の節句(子どもの日)にこいのぼりを飾る意味
「節句」は、そもそも邪気を祓う意味のある行事ですが、「端午の節句」は特に、男の子の健やかな成長を願うお祭りでもあります。
菖蒲や鎧などを飾ることも、男の子を守る、邪気を祓うことに繋がります。
特に、こいのぼりに関しては、男の子のお祭りということが強く影響しています。
生命力が強く、どんな環境でも川の流れに逆らって力強く泳ぐ鯉に、たくましく、元気に育って欲しいという願いと、中国の故事に習って、立身出世の願いも込めたことから、端午の節句にこいのぼりを飾るようになったのです。
こいのぼりの色の意味
こいのぼりの色にはそれぞれ意味があります。
こいのぼりの鯉は、基本的には3匹で構成されています。真鯉(まごい)、緋鯉(ひごい)、青い鯉の3匹です。
これは家族構成を表していて、真鯉は父親、緋鯉は母親、青い鯉は子どもとされています。
父親役の真鯉は黒で、一家の大黒柱であることを表現しています。
一方で、母親役の緋鯉は赤く、生命を担っていることを表しています。
そして、子どもの鯉は青で、若さや今後の成長などが表現されているのです。
しかし、この色による意味づけは昔から言われていることではありません。
染料が限られていた時代には、色々な色を実現することは難しかったため、色々な色のこいのぼりは、江戸時代よりも後に登場しました。
こいのぼりは、家族構成をあらわしているため、子どもの数が増えた家庭では、違った色の鯉を増やすことが多いです。
父親と母親の鯉の色は固定ですが、子どもの鯉として、青や緑、ピンク、紫などの色が見られます。
吹き流しの色の意味
最上部に、5色のひらひらとしたものが付いているのが、「吹き流し(ふきながし)」と呼ばれるものです。
色も決まっていて、青・赤・黄・白・黒が筒状になっています。
これにもやはり意味があります。
意味の由来は、古代中国の五行説です。
五行説の考え方では、世の中は、木・火・土・金・水から構成されていて、この5つの要素が影響を及ぼし合い、循環しているとされています。
この木・火・土・金・水にそれぞれ、色を振り分けて、青(または、緑)は「木」、赤は「火」、黄は「土」、白は「金」、黒(または、紫)は「水」と表されています。
吹き流しには、世の中を循環させる5色を使うことで、邪気を祓うという意味があります。
また、その形状で雲や滝を表し、邪気を祓う霊力もあるとされています。
ちなみに、吹流しが「家」を表すと言う考え方もあるようです。
そのため、こいのぼりを飾る順番は、家長のお父さんの上に飾り、家を表すと言う意味で、ここに家紋を入れる事があるのだそうです。
矢車と駕籠玉の意味
矢車は魔除け
他に、こいのぼりの飾りに使われる小物にも、それぞれ意味があります。
車輪のような形の矢車(やぐるま)は、魔除けの効果があるとされています。
矢車は、風が吹くとくるくる回る車輪のようなもので、風車だと思われている場合が多いようですが、実はよく見ると、中にある棒の部分が矢になっています。
矢は、武将の武器の弓矢が由来になっていて、「幸運を射止める」や「悪いものを射る」という意味から、魔除けのシンボルとなりました。
また、放射状に配置された矢は、通常、8本あります。
これは、「四方八方から(矢が飛ぶように素早く)幸福が訪れるように」という願いが込められているものと言われています。
加えて、矢車のカラカラという音にも意味があります。
この音は、魔除けのための音だとも、あるいは、お祭りで太鼓を打ち鳴らすのと同じように、神様を呼び込むための音だとも言われています。
駕籠玉は神様への目印
竿の一番上に付ける駕籠玉(かごだま)には、神様のご加護をお願いするという意味が込められています。
駕籠とは、竹で編んだ座席に人を乗せ、上部に棒を通して担いで運ぶ乗り物のことで、こいのぼりに付けるこの駕籠玉も、江戸時代には竹で編んで作られていたため、この名前が付いています。
駕籠玉を天に向けて差し出すことで、神様を呼び込むといった考えがあったようです。
つまり、空からやってくる神様の目印としての役目がありました。
そのため、駕籠玉は、金箔を貼るようになるなど、時代と共に、次第に派手になって行きました。
そして、現代では、キラキラと輝く回転球となったのです。
こいのぼりの種類
こいのぼりの種類
こいのぼりには、大きく分けて2種類があります。
1つは、地面に杭を打ち、固定したポールに揚げる「地上タイプ」です。
本格的なものだと3m~10mあり、迫力があります。
庭用だと2m~4mぐらいの大きさが人気です。
地面に杭を打たなくても、砂袋やスタンドで固定するタイプもあります。
もう1つは、マンションやベランダなどの手すりなどに金具で固定したポールに揚げる「ベランダタイプ」です。
「ベランダタイプ」には、ベランダの手すりに直接取り付けられる、ベランダ取り付け型や、金具で固定しなくてもスタンド型の支柱によってどこでも置けるタイプもあります。
また、もっと、手軽なこいのぼりとして、室内用に、部屋の中に置く置物タイプのこいのぼりや、積み木やぬいぐるみなど実際に遊べるもの、壁掛けタイプや室内に吊るすものなどがあります。
マンションやアパートでの生活に合っているものが多く、人気のようです。
一方で、こいのぼりの由来でもある、武者絵のぼりを飾る方もいます。
既製品のものは、すぐに手に入りますが、家紋やお子さんの名前を入れる場合は、手に入るまで日数がかかるので注意しましょう。
まとめ
青空にこいのぼりが泳いでいる姿は、実に清々しく、平和な光景です。
そう感じるのは、気のせいではなく、親が子供の健やかな成長や出世などの色々な願いが込められたものだからかもしれません。
今年の端午の節句は、是非、こいのぼりの意味をお子さんに説明しながら用意をしてみて下さい。
用意も片付けも、きっと端午の節句の良い思い出になってくれると思います。
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Writing:YUKIKO-加藤