このページでは二十四節気「霜降」の七十二候・初候における「霜始降」「豺乃祭獣」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。
目次
霜降の読み方
霜始降は「しもはじめてふる」と読みます。
霜始降とは?
霜始降とは、二十四節気の「霜降(そうこう)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の第1節です。
72の節気を持つ七十二候においては「第五十二侯(第52番目)」の節気、「初候(しょこう)」にあてられた語句になります。
太陽の黄経は210度を過ぎた地点です。
霜降期間中のその他の七十二候の種類・一覧
初侯:霜始降
次侯:霎時施
末侯:楓蔦黄
霜始降の意味・由来
日本(略本暦)での解釈
「霜始降」の意味は、「霜」「始」「降」とに分解すると分かりやすくなります。
「霜始降」の意味
「霜」の意味
「霜」は「しも」と読み、これは大気中に包有される水分が固体化してできた氷の結晶のことです。
「始」の意味
「始」は、「開始」、「始める」の始です。
「降」の意味
「降」は、そのまま「降りる」「下降」を意味します。
以上、まとめると「霜始降」の意味とは、『霜が降りる頃』もしくは『初霜が降りる頃』となりんす。
「霜」ができる仕組み
霜とは、0℃以下の冷えた物体の表面に、空気中に包有される水分が付着して固体化する(俗に「昇華」と呼ばれる)現象のことです。
ゆえに霜ができる仕組みとしては0度近くに物体が冷えることが条件になってきますので、自然環境で霜が見られる季節というのも晩秋〜初春までの冬期に限定されます。
特に移動性高気圧に覆われたような日の夜は気温が地表の温度より高いため、3°C以下になると霜が降りやすくなりんす。
霜が由来して生まれた言葉
霜凪(しもなぎ)
霜は晴天かつ、無風の日の夜に出来やすいことから、このような日にできる霜を「霜凪(しもなぎ)」と呼称します。
朝霜(きざし)
朝霜(きざし)とは、早朝に降りている霜のことを言います。
霜は露が凍った物体でもあることから、露と同じく朝日が昇ると、気温が上昇してしまうために跡形も無く消えてしまいます。
星霜(せいそう)
星霜とは「歳月」のことです。古くは「せいぞう」とも呼ばれたようです。
星は1年に天を1周し、霜は毎年降るところから由来が来ています。
幾霜(幾星霜)
「幾星霜(いくせいそう)」もしくは「幾霜(いくしも)」とも言います。
長い年月(何年もの歳月)という意味がありんす。
霜は恋の詩としても詠まれることがあり、例を挙げると「あなたが来るのを霜が降りるまで待ちましょう♥」などとも使われることがありんす。ムフフ♡
霜焼け
空気が冷たすぎて皮膚の毛細血管が麻痺、血行も悪くなり、炎症が生じて赤紫に腫れ上がる現象。凍瘡(とうそう)とも呼ばれる。
霜枯れ時
霜が降りて草木が枯れることから、転じて商売や景気が良くない時期を示した言葉。
霜枯れ三月
霜が降りて草木が枯れることを転じて、特に景気が悪い10月11月12月のことを示した言葉。
霜の結晶は3つの花
雪の結晶の形は、よくご存知だと思いますが、雪の結晶が6つの花であるのに対し、霜の結晶は3つの花と言われます。
美しい霜の花も朝日が登れば跡形も無く消え失せてしまいます。
初霜が見られる時期は地域によって異なる!
歳時記では「霜月」が冬の区分に入っていることからも理解できるように実際に霜が降りるのは11月に入ってからのことです。
ただし、日本列島は縦長の形をしているため北と南で気候気象条件が異なり、初霜の時期も異なります。
二十四節気が作歴された中国の中原地方は日本の東北地方とほぼ同緯度であることから、他の土地よりは早く初霜が見られますが、誠に残念無念ながら霜始降の期間中ではなく、末候の「楓蔦黄」あたりからです。
時期で表すと11月の初旬頃から初霜が見られることでしょう。
日本の初霜は東北地方で例年11月頃から!
仙台を例に出せば、平均霜降期間は11月6日頃〜翌年4月14日頃までの約5ヶ月にも及びます。
対して東京の場合、12月10日頃〜2月26日頃までの約2ヶ月半くらいしかありんせん。
すなわち、東京を例に取って二十四節気に当てハメた場合、「小雪(11月22日頃〜12月6日頃)」の時期に霜降を配置するのが本来のあり方でしょう。
このように両者の間で約3ヶ月もの間が開くというのは、大きな暦のズレに他ならないモノであり、安易に修正すら出来なかった歴代の作歴者たちの頭を悩ませた様子が浮かびます。
霜は農家にとっては深刻!
霜は氷の結晶なのでよく見ると綺麗ですが、農家の人々にとっての霜は捉え方が少し異なります。
農家では「凍霜害(とうそうがい)」もしくは「霜害(そうがい)」と言って、秋や春の夜間に急激に温度が下がり、霜が作物に発生する現象を忌みます。
霜が作物に付着するとどうなるのか?
霜は作物の細胞を凍結させますので、細胞が破壊されます。この状態で日が昇ると葉や茎が褐色したり黒ズミはじめ、十中八九、枯死に至ります。
霜害を受けやすいのは耐久力がない新芽や、茶、ムギ、アスパラガス、果樹です。
葉物野菜は、初霜で出荷が早く終わってしまうことが多く、果樹は遅霜の影響で花が落ち、受粉できなくなり、その年の収穫が期待できなくなります。
「早霜」と「遅霜」
早秋に降りる霜を「早霜(はやしも)」、春以降の遅い時期に降りる霜を「遅霜(おそじも)」と呼びますが、農家では霜害を回避するために出荷を早めたり、遅霜になると花が落ちて受粉できなくなるため、収穫量が減少します。
全国規模で農家が受ける霜害の被害額を総計した場合、50億円規模にのぼることもあります。
なぜ「発生する」と言わずに「降りる」?
考えてみたら不思議しぎしぎ摩訶不思議なことに「霜が発生する」とは、言わずに「霜が降りる」と言います。
この理由は、どうも昔人は霜は雨や雪のように空から降ってくるものだと信じていたようで、言葉使いのみが現在まで踏襲されていることになりんす。
よって正式には「霜が発生する」というのが正しい言い方です。
中国(宣明暦)での解釈
中国における霜降の初候・第五十二侯の七十二候は「豺乃祭獣」です。
読み方は「さいすなわちけものをまつる」になります。
「豺乃祭獣」の意味
豺乃祭獣を分解して意味を紐解く!
「豺」の意味
豺とは、「さい」と読み、これは「山犬(やまいぬ)」のことを意味します。
ここでの山犬とは、ニホンオオカミのことを指しますが、明治時代より「山犬」と呼ばれるようになっています。
山犬の定義とは、山野にすむ野生化した犬コロ。もしくは野犬の事です。きゃきゃきゃ
「乃」の意味
「乃」とは、「すなわち」などの意味があります。助字です。うきゃ
「祭」の意味
豺乃祭獣の「祭」という文字が用いられていることに疑問が生じますが、「祭」の意味については象形文字の成り立ちのように分解して考えるとその意味合いがよく理解できます。
なにせ二十四節気は紀元前の古代中国で作暦された暦であることから文字という文字がまだ成立しておらず、二十四節気の文字列を見ていると象形文字の由来から言葉が定められた経緯が感じられます。
そこで「祭」の字の成り立ちを考えていくと‥
祭りは左に「月」+「又」としの直下に「示」を組み合わせて「祭」としています。
月は「肉」を意味し、「又」は「手(右手)」、「示」は「神」や「社」を意味します。
これらを解すると「右手で肉(いけにえ)を持って神にお供えする」となります。
これを豺(山犬)に当てはめた場合、「山犬が神に捧げるように生贄を並べて食べる」の意味合いになります。
「獣」の意味
獣は、野山にいる「けもの」です。
以上をまとめると「山犬が捕らえた獣を並べて食べる」という意味になりんす。
「獣を並べる」の意味
獣を並べるの意味を考えた場合、これは越冬支度をしていると定義することができます。
長い冬、野山が雪に埋もれ、尚且つ、エサとなる獣たちは冬眠するために地中に穴を掘って閉じこもってしまいます。
そこで秋のこの時期にできるだけたくさんの食べ物を蓄えておくために狩りをいつも以上に行い、冬支度に備えている様子が窺えます。
並べるという表現はまさに、一冬越せるだけの食べ物を蓄えている様子を表現しています。
「祭」を用いた節気が他にもある!
二十四節気には、このような「祭」の文字を用いた以下のような節気が他にもありんす。
- 二十四節気(中国宣明暦)「雨水」の初候「獺祭魚」(2月18日〜22日頃)
- 二十四節気(中国宣明暦)「処暑」の初候「鷹乃祭鳥」(8月22日〜27日頃)
獺祭魚の読み方は「たつうおをまつる」。意味は、「獺(カワウソ)が捕らえた魚を並べて食べる」。
関連記事:
鷹乃祭鳥の読み方は「たかすなわちとりをまつる」。意味は、「鷹が捕らえた鳥を神に捧げるように並べて食べる頃」。
この中でカワウソ選手だけがニュアンスが少〜し異なります。ぜひ、各ページを参照してみてください。
霜始降の日にち(期間)
- 太陽暦:10月23日〜27日頃
- 旧暦:九月中(九月の中気)