「山茶始開」「水始氷」の意味・由来・読み方|【立冬(二十四節気)七十二候・初候】

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このページでは二十四節気「立冬」の七十二候・初候における「山茶始開」「水始氷」の意味・由来・読み方についてご紹介しています。




山茶始開の読み方

山茶始開は「つばきはじめてひらく」と読みます。

山茶始開とは?

「山茶始開」とは、二十四節気の「立冬(りっとう)」をさらに3つの節気に分けた「七十二候」の第1節です。

72の節気を持つ七十二候においては「第五十5侯(第55番目)」の節気、「初候(しょこう)」にあてられた語句になります。

太陽の黄経は225度を過ぎた地点です。

立冬期間中のその他の七十二候の種類・一覧

初侯:山茶始開
次侯:地始凍
末侯:金盞香

山茶始開の意味・由来

日本(略本暦)での解釈

「山茶始開」の意味は、「山茶」と「始」「開」に分解すると分かりやすくなります。

「山茶始開」の意味

「山茶」の意味

「山茶」は「やまちゃ」「さんちゃ」「つばき」「サザンカ」などと読まれますが、ここではあえて「つばき」と読み、同じツバキ科のサザンカのことを意味するものと解されます。

「やまちゃ」とは、山に自生する茶樹のことですが、これについての詳細は後述します。

日本では通常、サザンカを漢字で示すと「山茶花」と書きますが、これは中国由来の七十二候らしい書き方&読み方となりんす。

「始」の意味

「始」は、「始めて」を意味します。

「開」の意味

「開」は「開く」と意味します。

以上、まとめると「山茶始開」の意味とは、『サザンカが花が開花する頃』となるんす。

本当に山茶はサザンカのことを指すのか?

日本では、山茶と書いて「ツバキ」と読むのですが、これは「つばき」の漢名を指す言葉です。しかしながら、あえて「サザンカ」としている点に疑問を抱きます。

実はこの表記については論争があったようで、現行の略本歴では「山茶」と書いて「ツバキ」と読ませているのに対して、宝暦暦(ほうりゃくれき)では「さんちゃ」と読ませています。
※注釈※=宝暦暦
1755年2月11日〜1798年2月16日)江戸時代後期の暦

高井蘭山(たかい らんざん)が1791年(寛政3年)に著した「年中時候弁」においては「山茶」とは「椿」を意味するとしています。

一方で上田秋成が1805年(文化2年)に著した「七十二候集解」によれば「山茶」を「山茶花(サザンカ)」としています。

現在では上田秋成の説が採用されていることになりんすが、この理由の1つとして、松尾芭蕉の時雨忌があることからも察することができるように、この時季はサザンカが咲き、椿はもう少し後で開花するものです。

他に「山茶花時雨(サザンカしぐれ)」という言葉もあるほどです。意味は「サザンカが開花する時季(11下旬頃〜12月上旬)に降る雨」のことです。




椿と山茶花の違い

元来、椿も山茶花も日本原産の花であり、それが中国へ伝わり、中国ではツバキのことを総称で「山茶(サンサ)」と呼ばれることになりんす。

それが七十二候に集録されて七十二候が日本へ伝来したことから、大きく見れば逆輸入されたことになりんす。

また、古来、冬に開花するツバキとサザンカは同じツバキ科であることから混同されてきた歴史があり、見分けが付きにくいものです。

以下ではツバキとサザンカの見分け方の一例を簡単にご紹介しておきましょう。

開花時期の違い
  • 椿:おおむね12月頃〜4月上旬(品種による)
  • 山茶花:10月頃〜11月頃
大きさの違い
  • サザンカはツバキよりも小型。
花ビラの落ち方
  • サザンカは花ビラを徐々に散らして落とす。
  • 椿は地面にボトっと花ビラ全部を豪快に落とす。

そう言えば、童謡「たき火」の第2節に、「サザンカ、サザンカ咲いた道、アヒルだアヒルだコノヤロー♪‥ではなく、たき火だ たき火だ 落ち葉焚きぃ〜♪」‥の歌でスッカリかりカリと日本人には馴染み深いものです。

ちなみに、この童謡「たき火」は、詩人・「巽聖歌(たつみせいか)」の作であり、当時、同氏が居処していた東京都中野区上高田の情景をもとに作られています。

「山茶花」の名前の由来

考えてみれば「山茶花(さざんか)」の名前の由来は気になるところですが、言葉をそのまま訳すと「山に生える、花ビラを付けるお茶の樹」と解されますが、一説によればその言葉通り、往時は山茶花を煎じてお茶として飲む風習があったようです。

ただ、この言葉は前述したように中国由来のものなので、その真意までは定かではありんせん。

冬が到来し、枯れているいく花がほとんどである中、あえて花を付ける山茶花は注目の的であり、このサザンカやツバキを題材とした詩は歴代の詩人たちに好まれ、数多く詠まれることになりんす。

山茶花の生垣

サザンカはツバキ科の常緑小高木で、高さが5メートル〜10メートルもあり、尚且つ、葉を落とさないことから家宅などの生垣(いけがき)として用いられることが多い植物です。

画像引用先:ウィキペディア

言われて見れば確かに!近所にこんな葉っぱの生い茂った家を見かけたかも。

でもねぇ、サザンカで丸ごと覆われた家というのは、さすがに観たことない。いたらツワモノ。‥おそらく、それしてる家の主人、学生時代、生徒会長に毎年立候補しとったハズ。丸尾丸メガネくん?




中国(宣明暦)での解釈

中国における立冬の初候・第五十二侯の七十二候は「水始氷」です。

読み方は「みずはじめてこおる」になります。

「水始氷」の意味

「水始氷」の意味は「水」「始」「氷」とに分けると分かりやすくなりんす。

「水」の意味

「水」はそこらに転がっている水。ん?水が転がる? んん?

「始」の意味

「始」は「始めて」を意味します。

「氷」の意味

「氷」は「氷る」を意味します。

 

以上、これらをまとめると‥、「水が始めて氷る」となりんす。

七十二候が作歴された中国 中原地方は日本の東北地方とほぼ同じ気候!

すでに当サイトの記事で幾度がお伝えたとおり、七十二候が作歴された中国 中原地方は日本の東方地方と同緯度であることから、気候条件は近いものがあります。

ゆえにこの立冬の時期、朝露が蒸発する時間でも、水が氷っているほど気温が下がっている時期でゴザんす。

寒さが、ひときわ厳しい山岳地域などは紅葉もスッカリかりかりコノヤローなほどに終焉を迎え、今度はいよいよ本格的な真冬を迎えるための支度をする頃でゴザんすよ。

一方で都市圏では、いよいよ紅葉が本格化する頃であり、場所によってはすでに葉を落としているロケーションもあることでしょう。ウフ

四時堂其諺著の滑稽雑談による解説

江戸時代後期の俳人である僧侶の四時堂其諺(ししどう きげん)が著した「滑稽雑談(こっけいぞうだん)」では、次のようなちょっとユニークな解説がありんすよ。

『礼記月令に曰く、孟冬の月、水始めて凍る。仲冬の月、凍益々壮(さかん)なり。
季冬の月、氷まさに盛に、水沢腹堅し、命じて凍りを取る。』

  • 礼記月令=天子が民衆に施し、 民衆と共に自然の流れに任せて生きていこうとする政治的思想のこと。
  • 孟冬(もうとう)= 冬の初めの一か月
  • 仲冬(ちゅうとう)= 陰暦11月(12月10日から1月7日頃)
  • 季冬(きとう)= 冬の終わりの一か月。陰暦12月。
  • 水沢腹堅(さわみずこおりつめる)= 沢の水さえも凍る頃の意。※大寒の七十二候・第71候

この文章は冬の深まりの度合いを水の変化を参考にすることで感覚的に受け止め、それを言葉にして見事に表現しています。

意味を訳すと次のようになりんす。

冬の初めの一か月は水が初めて凍る様子を見た。氷の張りは、これからどんどんと盛んになっていく(まだ初冬の感覚)

冬の終わりの一か月は、沢の水さえも凍るほどに見渡すかぎり氷が一面に張っている。まさに氷の世界。凍りつき具合は今まさにピーク。(極寒・真冬の感覚)

山茶始開の日にち(期間)

  • 太陽暦:11月7日〜11日頃
  • 旧暦:十月節(十月の正節)

二十四節気と七十二候について

雑節について

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